①~⑤の長きに渡って、プラモデル、TVアニメ、音楽、劇場版など「リアルタイム世代から見た機動戦士ガンダムブーム」についてご紹介して来ました。>バックナンバーはコチラからご覧ください
今回は特別篇として、「ガンダム THE ORIGIN」をご紹介します。
「ガンダム THE ORIGIN」連載スタート
時に西暦2001年。
1st.ガンダムのキャラクターデザイン、作画監督、アニメーションディレクター、原画、レイアウト、イラストレーターを務めた安彦良和氏が、劇画「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」の連載をスタートしました。
©安彦良和、角川書店
安彦さんは当初「そもそもガンダムという物語は、自分が関わったとはいっても富野氏の作品だという意識も強かった」ため、当初この企画に難色を示していたそうですが、紆余曲折の末に書く事に決めた理由は病気で入院することとなり、手持ちぶさたにネームを切り始めたところ、一気にガルマ戦死のくだりまで描き進められたこと、さらに富野氏からも「自分も楽しみにしているから好きにアレンジして欲しい」と言われたから、だったのだそうです。
そして、「体調を崩し、テレビ版の制作現場から去ったことに、けりをつけたい」「テレビ版のおかしな点をわかりやすく整理し、現在でも通用する物語を再構築したい」などの想いが芽生えた、と語っています。また、同じキャラクターデザインで知られる貞本義行氏が「新世紀エヴァンゲリヲン」のコミカライズを始めた事に刺激を受けた、とも。
安彦氏の描く「一年戦争前の史実」にファンは熱狂し、連載は10年の長きに渡ります。私も愛蔵版で全巻揃えました。なんというか、これだけの熱量の有る作品を安いコミックで買うのは失礼な気がしたんですよね。安彦さんはたった一人で、筆で作画していると聞いたことがあります。
そして2015年からはアニメーションとして公開が続いています。
●富野由悠季氏との関係性
安彦氏曰く、
「コメントは彼の性質上、しないと思います。ただ、観てくれているのではないかと。漫画原作を描く前に富野さんとは話をしていて「読ませてもらう」と彼は言ったんです。それが僕にとってのゴーサインだったんです。そういう話し合いはアニメ化に関してはしていないけれども、「期待した以上は見せてもらうよ」と同じように言ってくれるのではないかなと。それが僕にとって、一番嬉しい彼のメッセージです。」
と語っています。
また、当時富野氏が演出したキャラクター像に対しては、
「変えちゃうとまずいと思うんです。細かい設定的なところ、年齢や役割を変えたりはしていますが、メインキャラは変える必要がないです。それは見事なまでにそうだと、僕は思っています。」
「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」は2002年から2015年までかけてコミックス全24巻、愛蔵版では全12巻を刊行。
その後、アニメーション化が決定しシャアとセイラの少年少女時代から一年戦争開戦までを描いた通称「シャア・セイラ編」(コミックス9〜12巻)が2015年から2016年にかけて全4章構成で公開、2017年からは「ルウム編」が全2章で公開される予定となっています。
●次の第6作でアニメ版「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」は完結?
これについて安彦氏は、
「リライトした漫画原作の本編部分はまだ手付かずなんです。これはリメイクじゃないですよ、という断りをしつこいくらい入れながらでも映像化したいという気はあります。それをやり切らないと、このプロジェクトは終わらないというのが僕の考えです。ただ情報量として今回のアニメ版の3倍はあるので、単純に考えても20時間近いものになります。そしてすでに一度見ているストーリーですから、機動戦士ガンダムのリメイクではない、THE ORIGINで観たいという人が、そして作りたいという人がどれだけいるかですね。そして引退も何も自分の寿命が、作り切れるほどないとはっきり言えるので(苦笑)。だからもう、どれだけできるかの勝負です。」
と語っています。
ぜひ観たいです!
●そして再び、富野氏について
俗にいう一年戦争、いわゆる1st.ガンダムをアニメ化する際に富野氏と話をするか、と聞かれた安彦氏は
「いや、漫画原作の機動戦士ガンダム THE ORIGINがありますから。あえてそれは必要ないと思います。そういう意味でも、リメイクではないのだということが大事なポイントなのです。」
と語り、併せて
「僕は世界の誰よりも富野由悠季をリスペクトしていると自負しています。こういうことを言うのは問題かもしれないけど、僕の中にいる38年前の“富野喜幸”ですよ。その後に彼がどうなっているか、今どうかは知らない。」
とも語っています。これはもう、当人同士にしかわからない関係性ですね。
●安彦氏が考える機動戦士ガンダムのテーマとは
2015年10月、ガンダム THE ORIGIN アニメ版のイベント上映初日の舞台挨拶に登壇した安彦氏は、「今年は戦後70年」と前置きした上で、ガンダムのテーマについて
「ガンダムは戦争を賛美する、逆に悲惨さを描いているなどと言われるが、どちらも違う。『人間が、なぜ戦争をしてしまうか?』がテーマ。それに気づかせてくれたのは、他ならぬアムロ」
と語っています。
とかくシャアばかりに注目が集まりがちな「ORIGIN」ですが、「機動戦士ガンダム 」を描く、となると、原点回帰で主人公であるアムロの存在が大きいのだなぁ、と再認識させられるお話しです。
完
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