今回は、昭和特撮。1975~77年にNET系列で放送された、東映・石ノ森ヒーローズ「アクマイザー3」と「超神ビビューン」を取り上げます。
変身しない3人のアクマを主役に据えた「アクマイザー3」とその続編である「超人ビビューン」は、いかにして生み出されたのか。
その魅力と共に、振り返っていきましょう。
アクマイザー3
アクマイザー3
1975年10月7日-1976年6月29日
NET(現:テレビ朝日)系
毎週火曜19:00~19:30
全38話
制作:NET/東映
東映・NETで同年4月に放送スタートした「秘密戦隊ゴレンジャー」。本作は、その人気が爆発していた半年後の10月にスタート。前番組「カリメロ」に代わり、毎週火曜の夜7時から放送されました。
本作の生みの親、東映の平山亨プロデューサーは「割とこの頃は自由にできた」と語っています。
「アクマイザー3」ストーリー
誕生のきっかけは、石ノ森先生ご用達の喫茶店ラタンで、平山氏が何かで読んだ「地球空洞説」のアイデアを石ノ森先生に話したことだったそうです。
地球の空洞ダウンワールドに住むアクマ族が、地上への侵攻を開始。
アクマ族と地上人との混血であるザビタンは、アクマ族のやり方に反発して反旗を翻します。
ザビタンを倒すためにアクマ族から送り込まれたイビル、ガブラはザビタンの心意気に触れ、協力を決意。
3人は「アクマイザー3」を結成し、アクマ族の地上侵攻を阻止すべく立ち上がる・・・という物語です。
もともと敵の組織の生まれで、正義のために裏切り者となる・・・というのは「サイボーグ009」や「仮面ライダー」と同様、石ノ森先生お得意のパターン。
奇しくも梶原一騎原作で東映ヒーローものの源流である「タイガーマスク」も同じなのが、興味深いです。
そして、この3人はアレクサンドル・デュマ・ペールの「三銃士」をモチーフとして、剣(ジャンケル)を武器に戦います。
「変身しない」ヒーロー
本作の特長は、「変身しない」こと。
平山氏は、「広告代理店の人に『平山さんのはいつも変身ですね。変身しないのはできないんですか?』と言われたのがきっかけ」と語っています。
そして、「仮面ライダーの半分程度」と少ない予算をやりくりするため、役者のギャラを節約する狙いもあったそうです。
変身しないヒーローの感情表現が難しいことは、以前取り上げた、「ロボット刑事」(1973/昭和48年)で懲り懲りだったハズなのですが・・・
本作では、数種類のタイプの目を付け替えて感情を表現するなど悪戦苦闘しますが、「結局、人間の顔を持たないとダメなんです」(平山氏)。
17話からはザビタンのみ、「魔法力」によって人間体に逆変身するようになりました。
青二プロの豪華声優陣&キャラクター
本来、人間体がないヒーローのため、特撮番組では珍しく、多くの声優陣が出演しています。
主役のザビタンは、花形満、石川五右衛門、ハーロックで知られる井上真樹夫さん。
剣士なのに拙者と名乗るイビルは、普段は年配役が多い矢田耕司さん。
関西弁で三枚目キャラのガブラはボヤッキー、伴宙太でおなじみの八奈見乗児さん。
女アクマのダルニアは、クララや魔女っ子メグちゃんの吉田理保子さん。頭でっかちにならないように、お面状のマスクだったそうです。
そのほか、敵役のメザロードには辻村真人さん。そのほか、神谷明さんや大平透さんらが出演しています。
奇抜なデザインのメカニック
3人の乗るバイクは、「特撮ヒーローバイク回」動画でも取り上げた、族車のような「ギャリバー」。
3台が合体すると、「ギャリバード」という両側サイドカーに。
このギャリバード、平山Pは「素人アイデアで作ったはいいが、ハンドルが切れずに真っすぐにしか走れない、大失敗」と語っていますが、見た目のインパクトは大成功でした。
そしてウバザメのような異様なデザインの「ザイダベック号」。普段は幽霊船の姿で、かなり無理くりな変形をします。
戦隊モノで飛行機ではなく戦艦なのも異様ですし、設定とまったく関係ない星条旗調のデザインは、以前ご紹介したカゲスターの「カゲボーシー」にも通じる狂気を感じます。
そして本作の玩具は、「ポピー超合金」ではなくスポンサーの「タカトク合金」から発売されていました。
テコ入れでの路線変更から続編へ
「アクマイザー3」は当初は、アクマ族の裏切り者ヒーローとしての悲哀や、3人のキャラクターが織りなす物語がよく作り込まれていましたが、
当時の特撮モノお決まりの「視聴率UPのためのテコ入れ」が行われた結果・・・
中盤以降は当時人気絶頂の「秘密戦隊ゴレンジャー」や「がんばれ!ロボコン」に倣ってコメディタッチのストーリーになり、ギャグが多くなっていきました。
その象徴的存在が、ガブラがダチョウ姿の「ガブラッチョ」に変身すること。本作のコメディパートを担いました。
ちなみにガブラは水がエネルギー源で、よくガブ飲みしていました。
そして最終回。
敵と刺し違える必殺の「アクマイザーアタック」の見返りに3人はカプセルに魂が封じ込められるという、なんとも哀しいエンディングを迎えます。
しかし、これはすでに決定していた続編のための、前フリでした。
超神ビビューン
超神ビビューン
1976年7月6日~1977年3月29日
NET(現・テレビ朝日)系
毎週火曜日19:00 – 19:30
全36話
制作 NET
「アクマイザー3」の後を受けて同じ放送枠で翌週から始まったのが、「超神ビビューン」です。
平山Pによれば、当初は「アクマイザー3 魔神ハンター」という正統的な続編を企画していたそうですが、「アクマとか裏切りとかはややこしいから、フツーの変身モノに戻せ」と上層部やスポンサー筋から命じられてしまいました。
そこは何でも前向きな平山P。「アクマイザー3の視聴率は10~15%くらい。打ち切られるほど悪くはないが、20%は欲しい。えーい、思い切って変えちゃえと、割と気楽に変えた」
こうして「超神ビビューン」は、前作のテイストとは異なる明るいヒーロー番組となりました。
「超神ビビューン」ストーリー
アクマイザー3の戦いの後、地上にはアクマ族に代わり凶悪な妖怪が出現。
妖怪研究者のダイマ博士は全宇宙のもっとも輝ける星・破軍星を地に降ろす。
体操選手の月村圭は破軍星から降臨したザビタンの魂と一つとなり、超神ビビューンに変身。
ガブラの魂を受け継いだ重量挙げ選手の渡部剛=超神ズシーン
イビルの魂を受け継いだ水泳選手の菅一郎=超神バシャーン
と共に、妖怪を影で操る大魔王ガルバーの野望に立ち向かう・・・というストーリーです。
アクマから妖怪へ、スポーツ選手が変身
前作「アクマイザー3」の背景にもあった当時のオカルトブームの流れは受け継いでいますが、本作はアクマではなく日本の妖怪が敵のモチーフとなりました。
そして、放送開始と同時期に開催されたモントリオールオリンピックの影響で、主人公たちはオリンピック候補のスポーツ選手。
変身後のアクションにもスポーツの要素が取り入れられ、後のスーパー戦隊シリーズにも影響を与えたと言われています。
それにしても、体操選手がビビューン・水泳選手がバシャーン・重量挙げ選手がズシーンというネーミングは、なかなか秀逸です。
ちなみに「ビビューン」のマスクは、同じ石ノ森先生デザインの「デンセンマン」に流用されたと言われています
キャラクターと出演者
月村 圭(つきむら けい) / 超神ビビューン
リーダー格で天(空、火、光)の超神。
ザビタンから受け継いだ知恵と、スカイ剣で戦う。
演じているのは「仮面ライダーストロンガー」の荒木茂さん。
渡部 剛(わたべ ごう) / 超神ズシーン
大地(岩と土)の超神。
ガブラから受け継いだ力と、超神棒モンケーンで戦う。
演じているのはXライダーのライバル、
アポロガイストを演じた打田 康比古(うちだ やすひこ)さん。
菅 一郎(すが いちろう) / 超神バシャーン
海(水)の超神。
イビルから受け継いだ勇気と超神銃ピピートで戦う。
演じているのは坂田敏彦(さかたとしひこ)さん。
メカニック
ダイマ博士によって開発された、三超神の専用バイク。本作も相変わらず予算が少なく、撮影用車両は前作に登場したマシンのリアルな改造車でした。
そして、第1話でアクマイザー3から贈られた飛行要塞「ベニシャーク」。今回はシュモクザメがモチーフで、またしてもかなりイッちゃってるデザインです。
ベニシャークは小型から巨大化し、なんと会話も可能。ドクロベェでおなじみ、滝口順平さんが声を演じていました。
シンドとビリン
さらに本作には、3メートルを超す大型の妖怪シンドと、毛玉のような小型の妖怪ビリンが登場します。
平山Pは「全員集合にでてくるジャンボマックスみたいなのが欲しかった」と語っています。
主題歌
本作の音楽は、渡辺宙明さんが手がけました。
「アクマイザー3」は、水木アニキが熱唱。
「超神ビビューン」は、ささきいさおさんに代わります。
2人のカラーの違いがよく分かり、面白いですね。
それにしても昭和特撮の楽曲、バックの演奏力(特にベース)がハンパないです・・・
「勝利だ!アクマイザー3」
作詞:石森章太郎/作・編曲:渡辺宙明/歌:水木一郎、こおろぎ’73
https://www.youtube.com/watch?v=QZGLTWmu25k
「すすめ!ザイダベック」
作詞:八手三郎/作・編曲:渡辺宙明/歌:水木一郎、こおろぎ’73
https://www.nicovideo.jp/watch/sm35343701
「斗え!!超神ビビューン」
作詞:石森章太郎/作・編曲:渡辺宙明/歌:ささきいさお、こおろぎ’73
「われらの超神ビビューン」
作詞:八手三郎/作・編曲:渡辺宙明/歌:ささきいさお、こおろぎ’73
おわりに
今回は「アクマイザー3」と「超神ビビューン」を取り上げました。
リアルタイムで見ていた記憶では、やはり「アクマイザー3」の方がインパクトがあり、シリアスとギャグのバランスもよく面白かった印象があります。
「超神ビビューン」の方は、なんというか全体的に薄味で、あんまり記憶にないんですよね・・・。
とはいえ、こんな番組が夜のゴールデンタイムで毎日毎日見られた昭和のちびっこたちは、幸せだったと思います。
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