「スクワット」伝説 1950~ヒンズースクワットとプロレス

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「金スマ」でも取り上げられた話題の本「死ぬまで歩くにはスクワットだけすればいい」(幻冬舎、順天堂大学医学部教授 小林弘幸先生著)

「1日たった10回のスクワットで死ぬまで歩ける」というフレーズで、高齢の方でもできる安全なスクワットトレーニング法。

転倒をキッカケに寝たきりになるお年寄りが多い事もあり、足腰の鍛錬は大切。でも、足を鍛えるって歩くのも走るのも時間がかかるし…というニーズに応えたものですね。

 

黒柳徹子さんが「徹子の部屋」でジャイアント馬場さんに健康法として勧められて毎日欠かさず行っているのは有名ですし、上演2017回の舞台「放浪記」で有名な女優の森光子さんが87歳まで現役だった秘訣も「毎朝のスクワット」でした。

 


 

いまや多くの日本人に認知されている「スクワット」。かつては「ヒンズースクワット」と呼ばれていました。

このトレーニング方法の発祥はプロレスです。

 

今回はプロレスの「スクワット伝説」についてご紹介します。

 


 

◆日本プロレスへスクワット伝来

 

1955(昭和30)年、力道山道場に入門したジャイアント馬場さん、アントニオ猪木さんの若手時代のエピソードとして有名なのが「数千回にも及ぶヒンズースクワットによって道場の床に汗の水たまりができた」というものです。

 

ヒンズースクワットを日本に伝えた人物は、1950(昭和25)年に日本プロレスに来日したインドの強豪ダラ・シンと言われています。ダラ・シンはインド式鍛錬法・ヒンズースクワットを力道山に伝授。以降、力道山道場の伝統となりました。

 

ジャイアント馬場さんは初めて力道山と会った際「その場でスクワットをやらされて100回やったら入門を許された」と語っています。

 


 

◆「とりあえず1000回」の小鉄さん

 

昭和のプロレスファンにとって、スクワットで思い出されるのはなんといっても新日プロの鬼軍曹、道場長 山本小鉄さんです。小鉄さんの口ぐせは「とりあえず(スクワット)1000回!」

 

昭和の新日プロ、上野毛道場のトレーニングは厳しい事で有名で、いくつか当時の映像が残っています。

 

▼昭和新日道場

 

▼新日式トレーニング詰め合わせ 初代タイガーマスク
https://youtu.be/Kd8NrZQfL2M

 

スクワットを100回1セットで10セット〜、その後、ライオン式のプッシュアップ(腕立て伏せ)数百回〜は当たり前で、それはあくまで準備運動。ヘロヘロになってからようやくスパーリングで、先輩レスラーに上に乗られて口を塞がれ、苦しいので必死に逃げる、「ラッパ」と呼ばれる地獄の特訓などで鍛えられました。

 

藤原喜明氏「足が痛いので練習休ませて欲しいと言ったら足が痛いのはスクワットしたら治る!とやらされて、あんまりシゴかれてアタマに来て、毎日小鉄さんを殺そうと考えていた前田日明氏「若手時代、小鉄さんのキャデラックのエンジン音を聞くだけで震えた」などなど、多くのレスラーから語られています。

 

「プロレスの神様」と呼ばれ、多くの門下生を生み出したカール・ゴッチ式トレーニングはダンベルなどの器具を使わない事で知られ、腕だけでのロープ登り下りや、スクワット、捻りを加えたプッシュアップ、縄跳び、そしてブリッジなどで基礎体力を鍛え、後は徹底したスパーリングでした。

 

実際、アントニオ猪木の全盛期のスタミナは異常で、60分フルタイム戦っても平気な顔をしていましたし、ラウンド制の異種格闘技戦では、ラウンド間の休憩時間にも決してイスに座らないのが美学でした。

 

私はこの新日プロ上野毛道場の風景に憧れて、高校時代に所属した器械体操部でこのトレーニングを独りで再現していました(笑)。

 


 

プロレスファンの間でも「プロレスラーになるにはとにかくスクワット」というのは常識。

猪木に憧れてプロレスラーを志した少年時代の高田延彦氏「住んでいた団地の芝生でヒンズースクワット1500回が日課。途中で数がわかんなくなっちゃうから、つまようじを15本持って、100回で1本捨てて、全部なくなったら終わり」と語っています。

 

猪木の海外遠征で、地元テレビ局の番組に出演した折、「プロレスラーのスゴさを理解してもらうために、収録の最初から最後まで何時間もスタジオの端で新人レスラーにスクワットをやらせた」というエピソードも有名です。

 


 

このスクワットは、トレーニングという効果だけでなく、根性を鍛える、そしてもう一つ「見込みのないヤツを辞めさせる」という役割もありました。

 

いまやスイーツ好きで知られる真壁刀義選手は、blogで新弟子時代についてこう語っています。

「集合の合同練習はまた酷かった。まるで見せしめの様に ちゃんと大声で号令を掛けても、ちゃんとした正しいフォームで回数をこなしても殴られ罵声を食らう。そう、運動能力を上げる練習でなく、辞めさせる練習だったんだ。そうなってくると入門前に軽く1000回出来たスクワットも、たかが100回で体が重くなってきて出来なくなってきやがるんだ。300~500回の出来て当たり前ぇのスクワットがな。だから声が小さい、フォームがダメだとなんくせを付けられ回数も倍になっていきやがる。筋肉がパンパンで息も切れて身体が上がらなくなる。そうなると殴られ道場から『出てけ』と閉め出される。食い下がるが閉め出される。ソコで塞ぎ込んでりゃ また殴られるからチクショーと思いながらもシャワーで汗をながす」(原文ママ)

 


 

現在、スクワット発祥であるプロレス界では、ヒザへの負担、ケガ防止の観点から準備運動として200回程度に留めておくのが主流となっているそうです。

 

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