昭和特撮「スペクトルマン」〜1971年 第2次怪獣ブームの火付け役 -身震いするほど腹が立つ-

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特撮
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懐かしの昭和特撮シリーズ、今回は1971年にフジテレビで放送されたピー・プロダクション制作、異色のヒーロー「スペクトルマン」をご紹介します!

 


 

●第2次怪獣ブームの火付け役

 

「スペクトルマン」は1971(昭和46)年1月から放送スタート3回に渡りタイトルを変えながら1年3ヶ月、計63話も続いた、フジテレビ 土曜 夜7時からの特撮番組です。

「戦え!マイティジャック」も苦戦した、裏が「巨人の星」という放送時間帯でしたが、第15話(1971 昭和46年4月)には視聴率で逆転。

スポ根、アニメブームに押され姿を消していた「特撮巨大ヒーローもの」はこのスペクトルマンで約3年ぶりの復活。3か月後の1971(昭和46)年4月から放送スタートした「仮面ライダー」「帰ってきたウルトラマン」などと共に、第2次怪獣、変身ブームの火付け役となりました。

 


●「悪役が主役」の異色作

 

スタート当初は「宇宙猿人ゴリ」、続いて「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」、そして「スペクトルマン」に。タイトルが示す通り、当初は悪役のゴリが主役で、正義のヒーロー スペクトルマンが脇役という、なんともチャレンジングな設定でした。

 

「宇宙猿人ゴリ」


1971年1月2日 – 5月15日
20話

「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」


1971年5月22日 – 9月25日
20話

「スペクトルマン」


1971年10月2日 – 1972年3月25日
23話

 

いずれも土曜19:00 – 19:30
フジテレビ系
制作 ピー・プロダクション

 


●主題歌の変遷

 

「宇宙猿人ゴリ」~「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」では、
オープニング:「スペクトルマン・ゴーゴー」/エンディング:「宇宙猿人ゴリなのだ」


 

「スペクトルマン」になってからは
オープニング「スペクトルマン・マーチ」/エンディング:「ネビュラの星」

と変わりました。中でも、「宇宙猿人ゴリ」の歌詞に注目です。

 


●宇宙一の逆ギレ ソング

 

悪の歌、としてはレインボーマンの「死ね死ね団の歌」と並ぶ昭和の怪作です。

 

「宇宙猿人ゴリなのだ」
作詞:雨宮雄児/作曲:宮内国郎

 

1番
惑星Eから 追放された
その悔しさは 忘れはしない
宇宙を旅して 目についた
地球を必ず 支配する

[中略]

3番
自分の理想と 目的持って 
強く生きてる そのはずなのに

宇宙の敵だと 言われると 
身震いするほど 腹が立つ

「我々の力の程を見せてやれ!」 
「ヴァーーッ!!」 

私は科学者 宇宙猿人ゴリなのだ

 

…どうですか。軍歌調の曲に七五調の歌詞、油断すると思わず口づさんでしまう魔性の魅力…。

特に3番の歌詞は秀逸で、中でもこの「身震いするほど腹が立つ」というフレーズは私のお気に入り。

悪役には悪役なりの事情と主張があるのです(笑)

 


●天才科学者ゴリと助手のラー

 

「猿の惑星」を彷彿とさせるIQ300の天才科学者ゴリパツキンにパープルの顔面ファッションもパープルが基調でオサレです。


▲青江三奈さんではありません。

子分のラーはゴリラそのまんまのルックスで、直情型の軍人でヘマしてはゴリにこっぴどく叱られる役どころ。

ゴリは惑星Eでクーデターに失敗、部下である軍人ラーと脱走し、宇宙をさまよっていたところで地球を発見。ゴリはその美しさに感動するも、それが故に地球を公害で汚す人間たちを許せない、と公害を元にした怪獣を創り人間を滅ぼそうとする…というストーリー。

 

最終回では、ラーをスペクトルマンに倒されすべてに絶望したゴリが、スペクトルマンの救いの手を振り切って自ら命を絶つのでした。


●時間のない中でのスタート

 

「戦え!マイティジャック 」に続く前番組のドラマ「紅い稲妻」が裏番組「巨人の星」に視聴率で惨敗し、打ち切りとなったことで急遽制作が決定。わずか1ヶ月弱の制作期間で放送スタートとなり、脚本家の辻真先氏は、一晩で第1話と2話のシナリオを執筆したそうです。

 


●テーマは「公害」

 

初期のテーマは「公害」。この当時、1971(昭和46)年は環境庁が設置され、映画「ゴジラ対ヘドラ」が封切られるなど、大気、海洋汚染などが社会問題となった年でした。

 

「スペクトルマン」にも毎回、公害をモチーフにした怪獣が登場しますが…この「公害」テーマはスポンサー企業から敬遠され、さらには「悪役が主役」という設定もフジテレビから難色を示され…。

 

タイトルと設定を変更し、後半は主人公の所属組織が公害Gメンから怪獣Gメンになり、「正義のヒーロー スペクトルマンが怪獣と戦う」正統的なストーリーラインになっていきます。

 

とはいえ、全編を通してかなりダーク&ハードなストーリー。独特の作風も相まって「ウルトラマン」シリーズに比べるとマイナー感が漂うのですが、一方で当時「帰ってきたウルトラマンよりスペクトルマンの方を面白く観ていた」という声も多く聞かれます。

 


●変わり種のヒーロー

 

スペクトルマンは人工遊星ネビュラ71からゴリ追跡&地球防衛の任を課せられたネビュラ人の「サイボーグ エージェント」。地球人に模した「蒲生譲二」という人間の姿から、スペクトルマンには独断で変身はできません。毎回、ネビュラからの許可をもらった上で、そこからの光線照射がないと変身させてもらえないのです。さらには天候不順の場合などはネビュラから光線が照射できなかったり、と、なんだか単身赴任サラリーマンの悲哀すら感じます。

 

ちなみに、蒲生譲二(がもう じょうじ)というネーミングはアメリカの論理物理学者ジョージ ガモフのもじり

スーツアクターは「ウルトラセブン」と同じ、上西弘次氏。上西氏はスペクトルマンのほかにラー中身&声、着ぐるみアクションシーンの殺陣などなど、本作に深く関わっています。

 

また、「スペクトルマン」は数ある特撮ヒーローの中でも、デザインやカラーリングなどがかなり独特。円谷ヒーローのシルバーに対し、ピー・プロはゴールド。しかし前作「マグマ大使」に比べるとゴールドというより茶色が多めの渋過ぎる色づかいです。

さらにはマスクデザインも複雑な直線の組み合わせで、ちびっこが似顔絵を描きづらいことこの上なし、でした。


●ピー・プロダクション

 

制作を担当したピー・プロダクションはうしおそうじ(鷺巣富雄)氏が代表を務める制作会社。

「マグマ大使」「ハリスの旋風」「怪獣王子」「吸血ゴケミドロ」「怪傑/風雲ライオン丸」「鉄人タイガーセブン」「電人ザボーガー」などなど、映画とテレビ、実写とアニメの両方を手がける、めずらしい会社です。

 

中でも特撮は独特な雰囲気、味わいがあり、円谷プロのウルトラマン、仮面ライダーをはじめとする東映作品とはひと味もふた味も違う設定、ストーリー、キャラとネタの宝庫今なお、カルト的な人気を誇っています。

 

ピー・プロダクションのそのほかの妖しいヒーロー達については、また改めて…

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