たびたび取り上げる昭和のプロレス入場テーマ曲について。今回は「ジャンボ鶴田 入場テーマ曲の変遷」をご紹介します。
過去、何度かご紹介した通り、ジャンボ鶴田選手は、日本人レスラーの入場テーマ曲使用の草分け的な存在です。
①「チャイニーズ・カンフー」
フランスのディスコ グループ「Banzaii」のデビューシングル「Chinese Kung Fu」。1975(昭和55)年のヒット曲です。
この曲で印象深いのは、なんといっても1977(昭和52)年8月25日、田園コロシアムで行われたUNヘビー級選手権試合 ジャンボ鶴田vsミル マスカラス戦。プロレス大賞 年間最高試合「ベストバウト」を受賞したこの試合は、両者がテーマ曲に乗って入場してくる(当時としては画期的な)シーンから、プロレス新時代の幕開けを予感させました。
もう一つ、アブドーラ ザ ブッチャー/ゴジン カーン著「プロレスを10倍楽しく見る方法」(1982年)の中で「ツルタのテーマはチンドン屋みたいだ」と酷評されていたのを思い出します。
②「ローリング・ドリーマー」
唄:ジャンボ鶴田 作詞:喜多條忠 作曲/編曲:川口真
次に使用したのがこの曲。上のYouTubeは蔵前国技館、リック フレアーとのNWA世界戦で満場のツ・ル・タ コール入り!
赤と青の星入りパンツ、「若大将」時代のラテン ディスコ調の名曲です。
当時、ジャケット違いでインスト版と歌ありの2種類のEPレコードが発売されていましたが、入場テーマはダブルアーム スープレックスがジャケットのインスト版。懸命な措置です(笑)。
ジャンボ鶴田は「唄うプロレスラー」。当時、ギター弾いて唄うリサイタルまで開催していました。B面に収録は鶴田 作詞/作曲のフォークソング「サヨナラは言わないで」。まさに戦う剛田武!
歌ありの方、朴訥としたジャンボの歌唱はさておき、なかなかの名曲なのです。なんと作詞は「神田川」の喜多條忠さんです。
出会いの数だけ 別れがあると
わかっているのに 恋をする
③「T.T.バックドロップ」
ギタリスト小川銀次さんによるフュージョンロック調のカッコいい曲、なのですが…
なぜか1983年8月31日、蔵前国技館、テリーファンク引退試合のセミで行われた、インターナショナル ヘビー級選手権 vsブルーザー ブロディ戦のみでの使用となりました。
定着しなかった理由は不明ですが、イントロが長すぎ、メロディ ラインが覚えにくいため…?もしかすると本人が気に入らなかったのかも、ですね。タイトルのT.T.もナゾですが…鶴田友美?
④「J」
おそらく最も有名なのがこちら。1983年12月頃から、鶴龍対決〜三冠統一〜三沢ら超世代軍と戦い「怪物」と呼ばれ、引退まで使用されました。
作曲は「海のトリトン」の鈴木宏昌氏。そして演奏は「今夜は最高!」にも出演していた“日本最強のフュージョン バンド” The Players(鈴木宏昌、松木恒秀、岡沢章、渡嘉敷祐一、山口真文)。
この曲は複数のバージョンがあり、ややこしいことで知られています。
1983年6月、VAPから発売の「MAIN EVENT」に“ジャンボ鶴田ニューテーマ”として収録され、以降はこのバージョンが会場でも使用された公式音源…なのですが、それ以前に会場、TV中継で使用されたものと違うのです。
最初期に使用されたオリジナル バージョンは言わば「プロトタイプ」。シンプルな音の作りでキレがあります。
VAPから発売されたものは、リヴァーブがやや深めで、「VAP」版と呼ばれます。
マニアの間では「J」には2パターンある事は有名でしたが、1992年、鶴田選手が肝炎にかかり、スポット参戦を余儀なくされた現役後期に、再び初期オリジナル バージョンが使用され「やっぱり初期の方がいい」と、再び注目が集まりました。
その後、幻のオリジナル バージョンはVAP『プロレス・格闘技秘蔵曲コレクション「J」~プロ・格 探偵団 / 格闘技』に(未発表音源)として収録され、初CD化されました。
2000年、突然の逝去の際には追悼番組で「スロー バージョン」が流れました。馬場に鶴田に三沢…全日本プロレスのエースは早世過ぎますね。
●おまけ~「J」 jazzバージョン
2012年、Warner Music Japanから発売された「wrestle jazz」に収録の「J」Jazzバージョンです。
このアルバムには、ほかに「炎のファイター」「王者の魂」「ドラゴンスープレックス」「パワーホール」「サンダーストーム」のjazzバージョンが収録されています。おススメです。
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