今回は、2016年4月に亡くなられたアクション漫画の巨匠 望月三起也さんの代表作「ワイルド7」 (1969年~ 79年 週刊少年キング 連載)をTVドラマ版と共に、ご紹介します。
スタイリッシュな構図と躍動感あふれるアクションは後の作品に多大な影響を与え、伝説のアニメーター金田伊功さん、安彦良和さん、「こち亀」の秋元治さん、「ジョジョ」の荒木飛呂彦さんなどなど、フォロワーを公言するクリエイター、漫画家が数多く存在します。
OVA作品も多数制作され、2009年には展示会、有名漫画家たちによるトリビュート作品が、2011年には実写版映画(監督:羽住英一郎 、主演:瑛太)が公開されるなど、連載開始から50年が経ったいまなお根強い人気を誇っています。
●「ワイルド7」とは?
週刊少年キング(少年画報社)
1969(昭和44)年9月21日号 – 1979(昭和54)年7月16日号
ヒットコミックス 全48巻
凶悪化した社会にはびこる悪を滅ぼすためには「毒をもって毒を制す」しかないと考えた警視庁は、札付きのワルをスカウトし訓練して、白バイ部隊「ワイルド7」を結成。それも、リーダーには警視長、メンバーには警視正という異常に高い階級を与えるという「超法規的措置」。「ワイルド7」たちは散弾銃やミサイルなどの武器、ド派手なバイクアクションによって、悪には一切容赦せず抹殺する、という過激な内容です。
草波勝は元警視庁のキャリア官僚、末は警視総監と言われるエリート。「法律で裁けない悪党はいっそ処刑してしまうべきだ」と唱え、ワイルド7を組織して自ら隊長となります。メンバーは、全員が前科者。バイクと射撃で一流の腕を持ち、機械工学を得意とする「飛葉大陸」をリーダーに、超怪力の「ヘボピー」、催眠術を使う「八百」、元ヤクザの「親分」、元サーカスの軽業師「世界」、頭が硬い「チャーシュー」、サッカーで鍛えた抜群の視力を持つ「テル」。そして元ゲリラハンターの女性隊員「ユキ」などが加わり、暴走する権力者、いまでいうテロリストなどの悪党共を問答無用で退治していきます。
1960年の安保闘争、1968年の全共闘に端を発する学生運動が70年代には中核派と革マル派の内ゲバ、”過激派”に移行し、よど号ハイジャック、浅間山山荘、ついには東京丸の内で爆弾テロまで発生するほど、社会情勢が緊迫していました。
漫画の世界では熱血スポコンと共に、白土三平、さいとう・たかを、池上遼一氏らの手による劇画ブームが起こります。
こうした時代背景と、漫画の表現技法を掛け合わせ、少年誌で新たな境地を切り開いたのが本作「ワイルド7」と言えるでしょう。
常識を超えた”過激な”やり方で凶悪犯を”ぶっ潰す”爽快感に加え、緻密に書き込まれたマシンやミリタリー、そしてダイナミックなパースで描かれる鮮烈かつスタイリッシュ、スリリングなアクションが大人気になりました。
●TVドラマ化
連載2年にしてTVドラマ化が決定。1972(昭和47)年から日本テレビ系列で放送されました。
「ワイルド7」
1972(昭和47)年10月9日 – 1973(昭和48)年3月26日
全25話
毎週月曜 19時00分 – 19時30分
日本テレビ系列
制作 国際放映、萬年社
当初はアニメ作品になる計画(同じ制作で前番組は月光仮面アニメリメイク「正義を愛する者 月光仮面」)だったそうですが、プロデューサーの強い意向で実写ドラマ化となります。
視聴率20%を超す人気番組となりますが25話で終了したのは「夜7時台には過激すぎた」という説もありますが、そもそも低予算だったことに加え、アクションシーンの撮影でフィルムが毎回使用料をオーバーし当初の予算枠を大幅に超えて大赤字となり、終了を余儀なくされた、という事情だったそうです(実際、プロデューサーの岡本直文氏は責任を取る形で本作終了後に国際放映を退社されています)。
TVドラマは原作版と設定が異なり、悪の組織「ブラック・スパイダー」を壊滅させるため結成された国際秘密警察の協力機関として描かれ、メンバー名も設定も微妙に異なっていました。
隊長の草波を川津祐介さん 飛葉大陸を小野進也さんが演じています。ちなみに小野さんは本番組の撮影中に足の指を3本切り落とす大事故に遭いましたが「主役がケガで降板しては…」と、麻酔を射ち出演を続けた、という逸話の持ち主です。
OP「ワイルドセブン」
作詞:阿久悠、作曲:森田公一、編曲:小山内たけとも
歌:ノンストップ
ED:「つむじかぜ」
作詞:阿久悠、作曲:森田公一、編曲:小山内たけとも
歌:ノンストップ
2011年には劇場版リメイクが公開されました。(監督:羽住英一郎 、主演:瑛太)
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