「仮面ライダー」と並ぶ、石ノ森章太郎先生の代表作「サイボーグ009」。
近年も続々と新作が作られ、なんと2015年には「サイボーグ009vsデビルマン」まで…
しかしタイトルとキャラは知ってても、どんな内容か知らない人も意外と多いのではないでしょうか。
今回は、1966と1979、2001の3度のテレビアニメシリーズを中心に、ご紹介します。
※文中、石ノ森先生提唱の「萬画」表記
●萬画作品「サイボーグ009」とは
手塚治虫先生にとっての「火の鳥」同様、石ノ森先生にとっての「サイボーグ009」はライフワークであり、特別な作品でした。
単行本の累計発行部数は1,000万部を超え、1964年の初連載からお亡くなりになる1998年までの実に30年間にわたって描き続け、完結編の途中で亡くなったため未完に終わっています(2014年、石ノ森先生の遺した膨大な構想ノートや直筆の小説原稿などを元に劇作家・演出家の小野寺丈氏(石ノ森先生の息子さんです)が構成、小説化。元アシスタントの早瀬マサト氏と石ノ森プロの手により萬画作品として完結)。
連載された雑誌も
「週刊少年キング」少年画報社
「週刊少年マガジン」講談社
「月刊少年ジャンプ」集英社
「COM」虫プロ商事
「週刊少年サンデー」「少年ビッグコミック」小学館
「マンガ少年」朝日ソノラマ
「SFアニメディア」学研プラス
と多岐に渡ります。
篇は違うものの、同一タイトルの萬画でこれだけ多くの出版社の雑誌に掲載された連載作品は、他に類を見ないでしょう。
「正義の味方としてではなく、悪の組織に特別な力を与えられた主人公が、力を授けた組織を裏切り、その野望に唯一対抗する存在として、孤独な戦いを続ける」というテーマは、後の仮面ライダーやキカイダーなどに共通する、石ノ森ヒーローの原点です。
時代背景として1960年代の米ソ東西冷戦やベトナム戦争など反戦、平和、さらには世界各地の神話や古代文明、人種問題や異文化の軋轢、文明社会の抱える矛盾、化学と宗教、といったものが取り上げられ、一貫して正義とは?チカラとは?神とは?人間とは?という実に深淵かつ哲学的な葛藤が描かれています。
ちなみに・・・余談ですが、やなせたかしさんの「アンパンマン」のコスチュームはまんま、このサイボーグ009のオマージュですよね。
石巻市にある「石ノ森萬画館」の受付の女の子たちのコスチュームもコレでした。
●009誕生
石ノ森先生は1954(昭和29)年、手塚治虫先生のバックアップもあり高校在学中に萬画家デビュー。その後宮城から上京し、伝説の梁山泊「トキワ荘」で執筆活動していました。
1958年(昭和33年)4月、トキワ荘で同居し、グループのマドンナ的存在だった実姉が持病の喘息で急逝する悲劇に見舞われます。
幼少期から「姉を喜ばせたくて萬画を描いていた」石ノ森先生は、最大の理解者であった姉を失ったことで執筆への情熱を失い、3ヶ月間、世界一周の旅へ出ます。
この「サイボーグ009」は、その帰国直後の作品です。「サイボーグ」は海外雑誌「LIFE」の特集にヒントを得て、野球チームのように特製の異なる能力を持つチーム、さらには出身国も世界各国になりました。
出版社に借りた旅行費用200万円を返済しなければならず、海外で得たアイデアを活かしエンターテイメントに徹して「萬画家としてのプロ意識を持って描いた最初の作品」と後に語っています。
●アニメ化
アニメ化は1966年の劇場版を皮切りに、テレビアニメシリーズとして
・1966-1968年(旧昭和版)
・1979-1980年(新昭和版)
・2001-2002年(平成版)
の3回放送されています。
●劇場版第1作 「サイボーグ009」
1966年7月21日公開
カラー作品 64分
●劇場版第2作 「サイボーグ009 怪獣戦争」
1967年3月19日公開
カラー作品 60分
▲この劇場版2作はいま、Amazonプライム・ビデオで観ることができます。
003はジュディ・オングさんです!
悪の「ブラックゴースト団」は、戦争を仕掛けて武器を売りつけて大儲けを企む死の商人として描かれます。さらには親玉は脳ミソだけの機械。「いつまでも戦争を止めない人間の欲が育てた」という設定が深いです。
●テレビシリーズ第1作 「サイボーグ009」
1968年4月5日 – 9月27日
日曜 18:25 – 18:55
NET系列
全26話
東映動画
モノクロ
テレビシリーズに先立って作られた劇場版2作品が人気を博し、長くメイン脚本家を務めた辻真先さんによれば「当初企画してた番組がボツになり、急遽テレビシリーズ化が決まった」のだとか。
興味深いのが先行した劇場版はカラーなのに、テレビシリーズはモノクロという点。五輪後、万博前のこの1968年頃は、まだまだカラーテレビは普及しきれていなかったのですね。
アニメ化にあたり、原作マンガからいくつか変更が加えられました。
・009は脱走犯からレーサーに
・009は混血の栗毛が黒髪に
・主役の009のみコスチュームを白、赤いマフラーに
(003はピンク、他のメンバーは紫のコスチューム)
・007は大人から子供に
・加速装置設定なし
など。
特長的な009の髪型も、両目が出るように変更されてしまいましたが、テレビシリーズでは原作に近くなっています。
これらの設定やキャラデザ変更について石ノ森先生は不満だったようですが、テレビシリーズは大人気作となり、初代オバQの曽我町子さんが演じた007が一番人気でした。
主題歌「サイボーグ009」
作詞 – 漆原昌久 / 作曲・編曲 – 小杉太一郎 / 歌 – 東京マイスタージンガー
劇場版からそのままTVシリーズでも使用された、勇壮でドラマティックな名曲。男声合唱が時代を感じます。
作曲の小杉太一郎さんは伊福部昭さん門下で日活、東映映画の劇伴を手がけていた方。調べてみたらなんと小林旭の「渡り鳥」シリーズもこの方なのだそうです。それまでの「マーチ調」の主題歌から進化した、後のアニメソングの源流とも言える傑作です。
●テレビシリーズ第2作 「サイボーグ009」
1979年3月6日 – 1980年3月25日
テレビ朝日系列
全50話
テレビ朝日、東映
私の世代にとっての009はこれです。
1975年に原作マンガが復活し、折からのアニメブームの中で注目と期待を集めた作品で、制作は日本サンライズでした。この頃が大学生など「大きなお友だち」がアニメにハマり出し、サブカルチャーとして確立した時期で大量のアニメ専門誌が刊行されました。
設定は原作に忠実に戻され、全員が赤いコスチューム&黄色いマフラーに。旧作世代の人は「赤いマフラーじゃないのかよ」と怒ってました(笑)。
「宇宙海賊キャプテンハーロック」の後番組だったこともあり、主題歌の作曲はハーロックに引き続き平尾昌晃さんが担当。
主題歌の編曲およびBGMはすぎやまこういちさんが担当。主題歌「誰がために」はアニメ史に残る傑作。
作詞を手がけた石ノ森先生も「一番好きな主題歌」だそうです。「番組タイトルを言わない主題歌」は当時としては異例でした。
op「誰がために」
作詞 – 石森章太郎 / 作曲 – 平尾昌晃 / 編曲 – すぎやまこういち / 歌 – 成田賢、こおろぎ’73
ed「いつの日か」
作詞 – 八手三郎 / 作曲 – 平尾昌晃 / 編曲 – すぎやまこういち / 歌 – こおろぎ’73
本作のop演出(天才 金田伊功氏によるもの)について、大の石ノ森フリークである島本和彦先生の「アオイホノオ」にてスルドイ言及があり…大笑いしました。
●テレビシリーズ第3作「サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER」
2001年10月14日 – 2002年10月13日
全51話
テレビ東京系列
日曜18時30分 -19時
2000年代に放送された第3シリーズ。
さらにキャラが原作に忠実になり、まんま石ノ森作画のクオリティ、ストーリー的にも過去2シリーズに勝るとも劣らない人気の「平成009」です。
avexが出資、音楽を小室哲哉氏が担当。さらにサポートにすぎやまこういち氏のパートナーである松尾早人氏が起用され、主題歌がglobeで話題になりました。
個人的には・・・アニメソングにタイアップを持ち込んだのは商業的には正しいのかもしれませんが、「ちっとも主題歌らしくない主題歌」が増えて、興醒めしたのも事実です。「子どもが唄える」って大事だと思うのですよ。
これ以降、「サイボーグ009」は21世紀になってからも再三、新作が制作されています。
▲新作に「誰がために2012ver」をあてたMAD
▲2018時点での最新作。
■紅一点 フランソワ
ヒロインのフランソワーズ・アルヌール(003)。石ノ森先生は「可愛い女の子」を描く事に長けていて、初期オバQの「よっちゃん」の作画を担当していたのは有名ですが、中でもこのフランソワ人気は別格です。
トキワ荘時代を知るマンガ家仲間は口を揃えて「亡くなったお姉さんにそっくりだ」と言います。石ノ森作品には後の「キカイダー」などでも孤独な戦いを続ける主人公を支えるよき理解者、そして母性としてのヒロインが登場します。
時代と共にキャラデザが変わり、その時代時代の人気の絵柄がよくわかりますね。
▲原作
▲最初の劇場版(1966)
▲TVシリーズ①(1968)
▲TVシリーズ②(1979)
▲TVシリーズ③(2001)
▲RE:CYBORG(2012)
▲CALL OF JUSTICE(2017)
■各キャラクター
◎ 001/イワン・ウイスキー(ロシア)
テレキネシスやテレパシーなど超能力を持つ赤ちゃん。チームの頭脳で指揮官。
◎ 002/ジェット・リンク(アメリカ)
両足のジェット噴射で空を飛ぶアメリカン。鼻が高い。考えるより行動派。
◎ 003/フランソワーズ・アルヌール(フランス)
超聴覚と透視能力を持つ金髪碧眼の美少女ヒロイン。009と相思相愛。元バレリーナ。
◎ 004/アルベルト・ハインリヒ(ドイツ)
マシンガンやミサイルなど手足に戦闘用火器を持つ兵器人間。シルバーヘアに白目のクールガイ。恋人と共にベルリンの壁を越えようとして瀕死の過去。
◎ 005/ジェロニモ・ジュニア(アメリカ)
100万馬力の怪力とスーパー防御力、顔に入れ墨状のキズを持つ巨漢ネイティブアメリカン。気は優しくて力持ち。
◎ 006/張々湖(中国)
口から火焔放射&地中潜りが得意な小太りの弁髪オジサン。中華料理屋を営む。
◎ 007/グレート・ブリテン(イギリス)
生物から無機物まで変身できるスキンヘッドの陽気なお調子者。英国の諜報部員(007なだけに)で元役者。アニメ初回版ではちびっこキャラに。
◎ 008/ピュンマ(ケニア)
最も過酷な過去を持つ、潜水が得意な寡黙なアフリカン。体内に酸素ボンベがあり宇宙でも活躍。みんなの飛行機を操縦。
◎ 009/島村ジョー(日本)
奥歯にマッハ5の加速装置と、比類なき正義感を持つ、美青年ハーフ。メンバー最後発の開発のため、能力が最も高い。前髪ハラリの髪型が個性的。
時代と、そして国境までを超えて愛され続け、今なお新たな作品が創られ続けるサイボーグ009。
これからどんな創造がなされるのでしょうか。
完
コメント
拝啓 サイトヘッド様にはよろしくお願いいたします。
*「歴史に残る東映アニメ サイボーグ009の神髄は、全て初代オリジナル版に在り」
この名誉ある名作アニメについて書かせて頂き感謝いたします。1966年当時自分は確か小学3年?当時と記憶しておりますが、何と言っても「素晴らしい主題歌とBGMには感激し、生涯忘れえぬ東映アニメの大傑作」と認定しております。東映アニメとは? 実は国内でも最も歴史が古く大傑作が多いのですが、何故か?原作者が無く東映オリジナルアニメ=レインボー戦隊ロビン 宇宙パトロールホッパ 海賊王子などがありましたが、このサイボーグ009はあの「石森章太郎先生=当時 自分が心より尊敬する日本の3大漫画家先生方に次ぐ巨人のお一人」の素晴らしい原作と設定 更に音楽担当の「小杉太一郎さんの素晴らしい音楽」に乗せて、当時のオンボロ白黒TVに夢中になってかじりついていた頃が懐かしい、、、、当時の石森章太郎先生は、まだ作詞と言う分野には進出されておられぬ頃(以後仮面ライダーシリーズ等かなりの数の作詞を担当され、驚くのは決して漫画家としての余技や趣味的な感覚では決して無く、言葉の使い方 音楽との融合性 起承転結等十二分に考慮された優れた作詞を担当され、各有名作曲家の諸先生方の見事な曲がつけられていますが、こうした背景は極めて珍しく、文学的な素養も相当に高度であり素晴らしい方でした) この初代009は、作詞「漆原昌久さん」が担当されましたが、この方は元々は作家であり幾つもの文学作品を出版され、後に九州交響楽団の事務局長に就任された事もある音楽的素養も確かな方でした。
更に作曲の「小杉太一郎さん」は、あの伊福部昭先生のお弟子の一人であり、元々東京音校出であり更に、池内友次郎氏にハーモニー/対位法を学んだと言う元々純音楽畑出身の方でした。何故かアニメはこの009の1曲だけでしたが、この009の主題歌/BGMは、まず他の作曲家の方では出来なかったろうと思われる凄い点が多数あります。サイトヘッド様は年齢的な感性と感覚から1979年の次世代版009=平尾昌晃さん作曲の「誰がために」をベストに挙げられておられますが、自分としては確かに名曲ではあり認められますが、正直初代009の音楽が見事過ぎて残念ながら心底好きには終ぞなれませんでした。
*「初代009 小杉太一郎節とは何か? ポピュラーに感じられつつも得難い独自の世界」
結論は「正規のクラシックをきちんと勉強された方の創られるポップスの物凄さ」なのです。この名主題歌をよくよく聴きますと、低音から始まり次第に盛り上がり、いつの間にか転調してマイナー短調からメジャー長調になり、クライマックスを迎えると言う手法は実に正統的な手法であり現在も決して絶対に古さを感じさせません。これはメロディーの素晴らしさが圧倒的で在り更に編曲アレンジがもうどうしようもない位に素晴らしい、、、、少し音楽をかじった方ならお解りのはずですが「弦 ストリングスを使わずに、当時の幼稚なテクニックをフルに使用し、エレクトリックギターにエフェクトをかまし、木管ウィンドと電子オルガンをバックに加え、当時一般的では無かったシンセの様な効果を生み出させ、サックスとペットの音の組み合わせとハーモニーはもうカッコ良いを通り越し、センスの良さを猛烈に感じさせます。更に一部のバージョン違いでは「ハープが実に効果的に使用」され、抜群の効果をあげているのもさすがにクラシック畑出身の方であり、正規のクラシック音楽基本教育がこれほど大切かと思い知らされるのです。更にBGMには素晴らしいマーチがありますが皆様ご存じでしょうか? やはり弦を使用せずにどうもインスパイアの原点は「ウィリアムテル序曲のスイス軍の行進」からヒントを得たと思われるブラスのファンファーレから始まり、サックスのコード奏法とバックを彩る電子オルガン、、、短いながらも起承転結に優れ深い印象を残す素晴らしいマーチですが、こういった曲を創れるのもやはり「師匠の伊福部昭先生が、マーチの達人」であり、主に短調マイナーマーチの傑作が多い中、お弟子の小杉さんは長調メジャーのマーチで勝負されたのでしょう。更にBGMには「数少ない弦と女性コーラス=当時はポップス系コーラスの登場前であり全てはクラシック系コーラスが幅をきかせておりましたが、この特徴を活かしきったBGMは見事でした。このBGMは番組ではレクイエムの様なシーンで使用されて効果的でしたが、、、、実は師匠の伊福部先生も「初代ゴジラの中で、女性コーラスのレクイエムを創られ使用」されており、なるほどこういう部分にも強い影響を小杉さんは受けていたのだと納得いたしました。やはり「師匠が凄ぇとお弟子も凄ぇ」と、、、、、更に初代009のテーマ曲は「カラオケ インストゥルメンタル」としても充分過ぎる程の傑作で、多数のバージョンが存在しますが、どれもこれも素晴らしくやはりメロの凄さとアレンジの素晴らしさ、オーケストレーションと楽器編成の妙技が深く心の刻まれるからこそ今日でも決して忘れられないのですね。小杉太一郎さんは若干49歳で亡くなられますが、例え肉体は滅びてもその魂と作品は決して死なず、我々ファンの心に何時までも残ります。日本アニメの黄金時代を飾る最も優れた初代サイボーグ009 こそその後造られた幾つもの新作バージョンのデケェ面を決して許さない 真の傑作として太鼓判実印銀行印三文判全て押される傑作なのです。 敬具