主題歌と共に振り返る60年代・モノクロ・テレビアニメの歴史① 1963-1964

※当サイトで掲載している画像や動画の著作権・肖像権等は各権利所有者に帰属します。

ID:12607

60年代モノクロアニメ アニメ
スポンサーリンク

今回からシリーズで、60年代にモノクロで放送されたテレビニメの歴史を、オープニング映像&主題歌と共に振り返ります。

 

60年代モノクロアニメ

 

第1回は、日本におけるテレビアニメの歴史が始まった1963-64(昭和38-39)年編です。

 

▶1つずつ動画を再生するのが面倒な方は、こちらにまとめてあります!

 

「再放送されない」60年代アニメ作品と、名盤レコード「テレビまんが主題歌のあゆみ」の思い出

 

手塚治虫さんの立ち上げた虫プロダクション「鉄腕アトム」から始まった日本におけるテレビアニメの歴史。当時はまだ「アニメ」ではなく、「テレビまんが」と呼ばれていました。

 

1970(昭和45)年生まれの私は、黎明期の60年代アニメを見る機会がありませんでした。なぜかというとモノクロだったからで、カラーテレビが普及した70年代以降は、ほとんど再放送されなかったからです。

 

それでも主題歌だけはよく知っていました。それは、1976(昭和51)年にLP4枚組で発売された「オリジナル原盤による テレビまんが主題歌のあゆみ」(日本コロムビア)を持っていたからです。

 

 

何度も何度も繰り返しこのレコードを聴いて、主題歌とわずかな画像だけを頼りに、「いったいどんな作品だったのだろう?」と想像を膨らませていました。

 

このアルバムが素晴らしいのは、タイトルの通り、全曲オリジナル音源が収録されていたこと。「そんなのあたりまえでしょ」と思うでしょうが、当時は質の悪いカバー版が平気で売られていた時代。いろいろな権利問題もあったでしょうに、この試みは画期的でした。

 

あれからン十年。今ではYouTubeなどの動画プラットフォームで、当時のOP映像を容易に見ることができるようになりました。作品についての情報も、あっという間に読むことができます。ほんとにいい時代ですね。

 

それでは、世代によっては懐かしく、また若い世代にとっては新鮮な映像の数々を、時系列で振り返っていきましょう。

 

① 鉄腕アトム 1963/フジテレビ/虫プロダクション

 


「鉄腕アトム」
作詞 – 谷川俊太郎 / 作曲 – 高井達雄 / 歌 – 上高田少年合唱団

 

全193話
1963年1月1日~1963年12月31日 毎週火曜18:15~18:45
1964年1月4日~1966年12月31日 毎週土曜19:00~19:30

 

■あらすじ:科学省の天馬博士が亡き息子を模して作ったロボット・アトムは、科学省長官・お茶の水博士の手によって救われ、電子頭脳・10万馬力など科学の力で、さまざまな事件や悪に立ち向かう。

 

手塚治虫が発足したアニメ制作会社「虫プロダクション」による、日本で最初の本格的な1話30分の連続TVアニメ、日本初の国産ロボットアニメ。すべてはここから始まりました。

 

超有名な主題歌は、実は当初はインストでした。

 

谷川俊太郎さんの歌詞がついたのは、なんと31話からです。谷川さん曰く、手塚さん自身が電話で作詞を依頼してきたのだそうです。

 

② 鉄人28号 1963/フジテレビ/TCJ(エイケン)

 


「鉄人28号」
作詞 / 作曲 /編曲 – 三木鶏郎 / 歌 – デューク・エイセス(西六郷少年少女合唱団)

 

全96話
1963年10月20日~1964年4月5 日 毎週日曜20:00~20:30
1964年4月16日~1965年5月27日 毎週木曜19:00~19:30
1965年9月1日~1966年5月25日 毎週水曜18:15~18:45

 

■あらすじ:太平洋戦争末期、大日本帝国陸軍が秘密兵器として開発していた巨大ロボット「鉄人28号」。戦後(昭和30年代年)を舞台に、リモコンの保持者次第で善にも悪にもなるロボットを巡り、少年探偵・金田正太郎と悪人たちの攻防を描く。

 

「鉄腕アトム」と並び、ロボット漫画の先駆けとなった横山光輝のマンガ作品をアニメ化。日本最古の巨大ロボット漫画であり、日本最古の巨大ロボットアニメです。後に繰り返しリメイクされました。

 

キャッチ―な歌詞とメロディで超・有名な主題歌は、日本のCMソングの先駆けである三木鶏郎氏によるもの。制作会社のTCJがテレビCM会社だった縁でしょう(後述)。本放送当時、開始時とテーマの最後に「グリコ、グリコ、グ〜リ〜コ〜」というデューク・エイセスによる通称「グリココール」が流れていました。

 

>昭和のスポンサー&ヒーロー番組の解説はこちら

 

それにしても、随分と放送日時が変わってますね。当時の子どもたちは混乱しなかったのでしょうか。

 

③ エイトマン 1963/TBS/ TCJ(エイケン)

 


「エイトマン」
作詞 – 前田武彦 / 作曲・編曲 – 萩原哲晶 / 歌 – 克美しげる

 

全57話
1963年11月7日~1964年12月24日 毎週木曜18:00~18:30

 

■あらすじ:警視庁捜査一課の敏腕刑事・東八郎は、犯罪者の凶弾に倒れるが、外国で軍事ロボットを研究していた谷博士の手により、生前の記憶を移植したスーパーロボットに生まれ変わる。私立探偵を開業した彼は、同時に捜査一課にある7個捜査班のいずれにも属しない8人目の刑事「エイトマン」として活躍する。

 

TBS初の自社制作アニメ作品。原作・平井和正、作画・桑田次郎によるSF漫画のアニメ化で、最高視聴率25.3%を記録する大人気番組になりました。

 

タバコ型強加剤のタイアップで発売されたシガレット型固形ココアや、スポンサー丸美屋食品工業のふりかけが大ヒット。日本中におまけの「エイトマンシール」が溢れました。本放送時のオープニング・エンディングには「提供 丸美屋食品工業」のクレジットが入っていました。

 

原辰徳をはじめ、後に多くのプロ野球選手の応援歌にも使われた主題歌は、当時人気絶頂の放送作家マエタケこと前田武彦氏が作詞、作曲はクレージーキャッツで知られる萩原哲晶氏。新幹線と並走するシーンが時代を感じます。

 

それにしても「鉄腕アトム」や「鉄人28号」と比べ、この「エイトマン」はあまりリメイクされていません。その理由は、作画の桑田次郎が連載中に拳銃不法所持で逮捕されたり、紅白にも出場した主題歌を歌う克己しげるが後に殺人事件を起こしたり、「呪われた作品」と呼ばれているからなのだそうです。

 

④ 狼少年ケン 1963/NET/東映動画

 


「狼少年ケン」
作詞 – 大野寛夫 / 作曲 – 小林亜星 / 歌 – ビクター少年合唱団

 

全86話
1963年11月25日~1965年08月16 日 毎週月曜18:15~18:45

 

■あらすじ:ヒマラヤ山脈を望むジャングルで狼に育てられた少年・ケンが、双子の子供狼・チッチとポッポや仲間たちとともにジャングルの平和を守る。

 

NET初のアニメ番組であり1950年代から劇場長編アニメ分野で多大な功績を残してきた東映アニメーション(当時・東映動画)が初めてテレビアニメに進出した作品。「天才」といわれた月岡貞夫氏が原案を提供、作画・脚本・演出でも辣腕をふるいますが、同時に氏の退社のきっかけともなりました。高畑勲氏の演出デビュー作品でもあります。

 

後にロッテのガムCMで使われ今もよく知られるノリノリの主題歌は、小林亜星さんの手による名曲です。当時は森永ココアについているシールが大人気でしたが、現代ではちょっと放送しにくいテーマですね…。

 

⑤ 0戦はやと 1964/フジテレビ/ピー・プロダクション

 


「0戦はやと」
作詞 – 倉本聰 / 作曲 – 渡辺兵夫 / 歌 – ひばり児童合唱団

 

全38話
1964年1月21日~10月27日 毎週火曜 18:15~18:45

 

■あらすじ:昭和17年、大日本帝国海軍は各戦線から腕利きの撃墜王35人を集め、宮本大尉の下に「爆風隊」を結成。ニューギニア戦線で64機撃墜の実績を誇る東隼人も、その一員に選ばれた。

 

週刊少年キングで連載されていた辻なおき(後の「タイガーマスク」作画)の漫画作品を原作としたテレビアニメ。1960年代の少年漫画誌で沸き起こった「戦記ブーム」の中、唯一テレビアニメ化されました。しかし戦争を題材にしていることでPTAなどから抗議が殺到したと言われています。

 

後に「スペクトルマン」など多くの特撮作品を手掛けるうしおそうじ氏のピー・プロダクションが制作。明治キンケイカレー(現:明治)の一社提供。脚本担当の倉本聡氏(!)が、主題歌の作詞も担当しています。

 

当時でも批判のあった戦争もの、しかも視聴率が低迷したことでほとんど語られない作品ですが、ピー・プロダクションとフジテレビの関係はここから。これがなければ「マグマ大使」も生まれなかったかもしれません。

 

>ピー・プロダクションについては別記事で詳しく解説しています。

 

⑥ 少年忍者風のフジ丸 1964/NET/東映動画

 


「少年忍者風のフジ丸」
作詞 – 小川敬一 / 作曲・編曲 – 服部公一 / 歌 – 鹿内タカシ、西六郷少年合唱団

 

全65話
1964年6月7日~12月 毎週日曜18:30~19:00
1965年1月~8月31日 毎週火曜19:30~20:00

 

■あらすじ:母が野良仕事をしているときにワシにさらわれたフジ丸は、風魔十法斉が率いる忍者集団「風魔一族」に育てられ、少年忍者となる。やがて育ての親・忍者長が実は悪人と知ったフジ丸は抜け忍となり・・・。

 

当時「カムイ伝」「忍者武芸帳」などで人気だった忍者劇画の巨匠・白土三平さんの原作「忍者旋風」を、東映アニメーションが児童向け冒険ものの内容にアレンジした作品です。テレビ忍者アニメの先駆けで、後の「サスケ」や「カムイ伝」の布石となりました。

 

服部公一さん作曲の主題歌の最後には、スポンサークレジットと共にスポンサー名「藤沢薬品」を連呼する女性コーラスが入っていました。

 

>関連記事「ヒーローと企業スポンサーのおはなし 60’〜70′」

 

「狼少年ケン」で培った作画技術を結集、実験的に国産テレビアニメで初めて一部カラーでも制作されました。また、若き日の宮崎駿が初めて原画担当として参画したことでも知られています。

 

⑦ ビッグX 1964/TBS/東京ムービー

 


「ビッグX」
作詞 – 谷川俊太郎 / 作曲 – 冨田勲 / 歌 – 上高田少年合唱団(上高田小学校)

 

全59話
1964年8月3日~1965年9月27日 毎週月曜19:00~19:30

 

■あらすじ:第二次世界大戦時、ナチス・ドイツは生物を鋼鉄のように強靭でしかも巨大化させる薬品「ビッグX」の開発を行っていた。軍事利用を恐れた日本人の朝雲博士とドイツ人のエンゲル博士は、その秘密を守るために製法を記したカードを朝雲の息子の体内に埋込むが、射殺されてしまう。20年後、朝雲博士の孫・昭は、「ビッグX」の製法を狙うエンゲル博士の孫のハンス率いる秘密結社「ナチス同盟」に対し、自ら「ビッグX」となり立ち向かう。

 

原案・原作は手塚治虫ですが、制作は虫プロではなく、新興アニメ制作会社・東京ムービーの創立第一回作品として、原作を提供した作品です。

 

おそらく手塚さんは「0戦はやと」の視聴率低迷と打ち切りに苦しむうしおそうじ氏のピー・プロダクションを助けるつもりだったのでしょうが、ピープロのアニメスタッフ組合が「30分物2本掛け持ちは無理」と猛反対。うしお氏の説得むなしくこの話が流れたため、既に放映枠とスポンサーを確保済みで困ったTBSが本作製作のために新たなアニメ制作会社「東京ムービー」を旗揚げすることとなったと言われています。

 

主題歌は「アトム」と同じ谷川俊太郎さんが作詞、作曲は「ジャングル大帝」と同じく冨田勲さんです。

 

番外編:仙人部落 1963/フジテレビ/TCJ(エイケン)

 


「仙人部落のテーマ」
作詞:キノトール / 作曲:山下毅雄 / 歌:スリーグレイセス

 

全23話
1963年9月4日~1964年2月23日 毎週水曜日23:40~23:55(第9話以降は日曜22:30 – 22:45)

 

■あらすじ:仙人たちの住む「仙人部落」が舞台。さまざまな術を使って生活する「仙人たち」の日常がコント風に描かれる。

 

アサヒ芸能に連載された小島功の4コマ漫画をテレビアニメ化。「初の4コママンガのアニメ化作品」「日本最古の深夜アニメ」とされます。エロチック・お色気描写が主体で、ナンセンスなギャグ展開が見られる大人向け作品。

 

時期としては「鉄腕アトム」の次の作品で、この時代に早くも大人向け・深夜アニメがあったとは驚きです。

 


 

TCJ(エイケン)とは?

 

ここで、これから何度も制作会社として登場する「TCJ(エイケン)」について触れておきます。

 

TCJは、1952(昭和27)年のテレビ放送開始に合わせて、テレビ受像機の輸入販売会社として、当時のヤナセ社長・梁瀬次郎の発案で「日本テレビジョン株式会社(Television Corporation of Japan Co.,Ltd.)」として設立されました。なんと「ベンツ」で有名なヤナセが母体だったとは驚きです。

 

1950年代半ばには「サイドビジネス」としてテレビCM制作を開始。受像機の輸入は予想よりも伸びず、国産が普及したんでしょうね。同社は黎明期のテレビCMの多くを手掛けており、ここでアニメーションの技術が磨かれます。

 

そして1963(昭和38)年の「仙人部落」を皮切りに、TVアニメ制作事業がをスタート。それから「鉄人28号」「エイトマン」「スーパージェッター」「宇宙少年ソラン」「遊星少年パピイ」「遊星仮面」などヒット作を次々と手掛け、1969(昭和44)年には、現在も続く「サザエさん」が始まります。

 

同年にアニメCM制作部門が(株)テイ・シー・ジェー動画センターとして独立。1973(昭和48)年に「株式会社エイケン」に商号変更します(この「エイケン」は、当時の社長・村田英憲(ひでのり)が由来なんだそうです)。

 

2019年に50周年を迎えたエイケン。現存するアニメ会社の中で、最も長い歴史を誇ります。

▼エイケン50周年記念サイト

エイケン50周年記念特設ページ
エイケン50周年記念特設ページ

 

 

>②に続きます!

コメント

タイトルとURLをコピーしました