水島新司さんの野球漫画シリーズ
に続いて、「あぶさん」をご紹介します!
●「あぶさん」とは
連載開始は1973(昭和48)年。
「ビックコミックオリジナル」(小学館)に掲載されました。
2014年2月の終了時点で41年間。
「日本で最も長く連載が続いたスポーツ漫画」。
単行本全107巻、エピソードは実に全976話!
主人公は、酒豪のスラッガー景浦安武。
彼のニックネームが「あぶさん」です。
1973(昭和48)年、ドラフト外で南海に入団。
ロッテの有藤通世さん、広島の山本浩二さん、阪神の田淵幸一さんと同期にあたります。
これだけ長く続いた国民的野球漫画にも関わらず、一度もアニメ化(実写化も)されていないのが、意外な気がします。
●70年代のホークス、パ・リーグを知る歴史書
70年代のパ・リーグは「人気のセ、実力のパ」と慰められつつも常に日陰の存在で、球場はいつも閑古鳥。
試合のTV中継もなく、コアな野球ファン以外は、それこそオープン戦や日本シリーズくらいでしか知ることのない世界でした。
そんな中、南海ホークスは巨人のV10を阻止(1973 昭和48年)した強豪チーム。
私はこの漫画で南海時代の野村克也さん、江本孟紀さんなどの活躍(グラウンドだけでなく大阪の繁華街ミナミも含めてw)を知りました。
その後、パ・リーグの盟主の座は、上田監督率いる阪急ブレーブス、西本監督率いる近鉄バファローズ、そして広岡監督率いる西武ライオンズへと移行して行き、80年代に入り清原和博さん、伊良部秀輝さん、野茂英雄さん、イチローなどスター選手が次々誕生。人気も高まっていきました。
その間、ずっとパ・リーグの広報的な役割を担ったのがこの「あぶさん」。
パ・リーグのプロ野球選手の間では「あぶさん」に出演するのがステータスでした。
●ホークス一筋
あぶさんは連載当初の南海時代は酒がたたって代打の切り札、「一軍半」の立場でした。
球界入りのきっかけは…
高校時代に二日酔いで地方予選・決勝戦に出場。
酒の臭いをニンニクで隠して飛距離155m以上のサヨナラ本塁打を放つが、ベースランニング中の嘔吐で飲酒がバレて優勝取消しに。
↓
その後、社会人 野花食品を経て北大阪電気に進むも、試合中のプレーをめぐって監督とトラブルになり、懲戒免職。
↓
居酒屋「大虎」でヤケ酒を飲んでいたところを、南海スカウトの岩田鉄五郎に熱心に誘われ、1973(昭和48)年にドラフト外で南海ホークスに入団。
初期はこのような“無頼漢の一匹狼“キャラだったのです。
そして1988(昭和63)年、球団身売りでダイエーホークスとなり、本拠地も大阪から福岡へ。
1991(平成3)年からはレギュラーに定着。
3年連続で三冠王にも輝き、根本監督、田淵監督の下で創立間もない弱小チームを支えました。
2004(平成16)年、ソフトバンクホークスとなってからも現役を続行。
2009(平成21)年に62歳で引退した際には、福岡Yahoo!ドームのシリーズ最終戦前に引退セレモニーが行われ、話題になりました。
あぶさんは翌年から王貞治会長の要請で二軍監督に就任。
シーズン終了後、再び王会長の要請を受け、2013(平成25)年シーズンより一軍の助監督に就任。
しかしBクラスに終わった責任を取り王会長に退団を申し出て、2014(平成26)年2月に退団。
球界から完全に身を引くところで、物語が完結しました。
途中、あぶさんは幾度かトレード、現役引退の危機がありましたが、結果的にホークス一筋。
その間、結婚、義弟との対決、子供の誕生、そして我が子もプロ野球選手となり最後は同じチームで活躍…という大河ドラマを追いつつ、実名選手との対決や共闘はもちろん、球団裏方のスタッフの活躍なども丹念に描かれています。
●”あぶさん” 景浦安武の主な記録
三冠王3回(1991 – 1993年)
首位打者4回(1991 – 1993年、2007年)
本塁打王6回(1986年、1991 – 1995年)
打点王4回(1991 – 1993年、1995年)
シーズン打率.401(456打数183安打)(2007年)
シーズン56本塁打(1994年)
4打席連続本塁打(1979年、1992年、1994年)
代打本塁打通算世界記録
年間代打本塁打記録
オールスターMVP3回(1981年)
サイクルヒット(1985年)
通算3000試合出場(2000年)
こうして列挙すると、人間離れした凄まじい記録ばかりですね。
しかし、作中ではリアリティとディテールに溢れる筆致で、あぶさん後に実現した記録も多くあり、そのために「まったくの絵空事」とは思えない説得力がありました。
とはいえ、スタート当初の設定からすると、90年代以降はいささか「確変モード」過ぎな感じが否めませんね…。
「あぶさん」は、実際のプロ野球をリアルタイムで漫画化した、初めての作品でした。
なにかと肖像権などの権利問題もうるさくなったこともあり、これから先、これを超えるプロ野球漫画は、まず誕生しないでしょう。
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