「プロレスにおけるビジネスモデルの変革」~TV地上波依存からサブスクリプションへ

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アイキャッチ プロレス
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本Blogでたびたびご紹介する「プロレス」。

コンテンツ別のアクセス数を見ても、「昭和のプロレスネタ」はいまなお人気がある(あった)んだなぁ、と実感します。

しかし、多くの方は「プロレスって、いまはテレビでやってないんでしょ」と思ってるのではないでしょうか。

そんなことはありません。

 


 

●テレビ朝日「ワールドプロレスリング」

土曜の深夜の2時~のとんでもない時間帯ですが、30分の地上波レギュラー放送をやっています。

これが地上波で現存する、唯一のTVプロレス番組です。

地方局では1週から8週(!)遅れとかですが、一応、全国ネットです。


http://www.tv-asahi.co.jp/wrestling/onair/

 

●BS朝日「ワールドプロレスリングリターンズ」

こちらはBS(無料)です。金曜深夜0時から、1時間枠。
内容は、地上波のおよそ3ヵ月遅れの大会を放送しています。

http://www.bs-asahi.co.jp/wrestling/

 


 

 

しかしまぁ、こんな時間帯では、好きな人が録画して観る、というだけですね。

かつて、金曜夜8時のゴールデンタイムでやっていた時代とは隔世の感があります。

もはやプロレスは「オワコン」で、「マニアだけのマイナーなジャンル」に・・・

 

 

ところがどっこい、プロレスのコンテンツとしての価値は継続中、というより過去よりもさらにスケールアップしているのです。

 


 

●新時代の視聴方式 オンライン配信サービス

 

新日本プロレスはテレビ朝日と共同で「新日本プロレスワールド」というオンライン配信サービスを提供しています。

http://njpwworld.com/

 

月額999円で「主要大会完全配信」を謳い、1.4東京ドームをはじめ年間シリーズは主要大会、後楽園ホール、G1クライマックスという人気リーグ戦は全戦が生中継されるほか、2014年秋ごろからのアーカイヴ、過去の黄金時代の猪木、藤波、長州、三銃士などの名勝負も視聴することができます。

 

会員数は、2018年1月時点で約10万人。売り上げ規模は毎月約1億円、年間約12億円という超優良コンテンツビジネス化しているワケです。さらには会員内訳の約4割が海外、中でもアメリカのファンの加入数が多いと言われています。

 


 

 

●世界最大のWWEネットワーク

こちらは世界最大のプロレス団体WWEが提供する動画配信サービスです。

http://network.wwe.com/

 

月額9.99$(約1,200円)と高額ながら、追加料金不要でPPV大会がリアルタイムに視聴でき、定期番組の「RAW」と「SMACKDOWN」は1ヶ月ほど遅れての配信。さらには1985年の「レッスルマニア第1回」からのアーカイブに加えて、買収したライバル団体WCWやECWなど、アメリカのプロレス史のアーカイブを進めています。

 

2014年2月からのサービス開始で、現在の加入者数は全世界で約150万人。月の売上が1,500万$ですのでおよそ15億円、年間で約180億円というのですから、スケールが違います。

 


 

●市場の広がり

 

この「WWEネットワーク」の市場は北米はもちろん、欧州や北アフリカ、アジア・オセアニアと全世界広がっています。ここで慣れ親しんでいるファンたちが、新たなコンテンツを求めて「新日本プロレスワールド」にも興味を示し、流入し始めています。

 

それゆえに、新日本プロレスの中邑真輔選手はそのままのスタイル、そのままのリングネームでWWEでもトップクラスとして扱われ、中邑選手以外にも新日本からの移籍組が何人もいます。さらには新日本プロレスの年間最大の大会「1.4東京ドーム」の試合後に、世界中のWWEのファン、そしてWWEのトップレスラーたちからTwitterなどで称賛コメントが殺到するのが、もはや通例化してきています。最近では、その波は女子選手にも波及。日本ではもはやドマイナーな女子プロレスですが、WWE入りしたASUKA、カイリ セインなどの日本人女子プロレスラーがワールドワイドなスーパースターになりつつあります。

 

 


 

●ビジネスモデルの変遷

 

昭和のプロレス団体は、地上波テレビの放送権料なしに経営が成り立たないビジネスモデルでした。ジャイアント馬場の全日本プロレスは日本テレビ、アントニオ猪木の新日本プロレスはテレビ朝日、そして国際プロレスはTBS→東京12チャンネル(現 テレビ東京)とそれぞれ蜜月関係にあり、そのバックアップで成り立っていました。

 

90年代に入り他団体化すると第二次UWFやFMWなど、地上波の定期放送がない団体はビデオテープの販売や、その後はスカパーやWOWOWなどのCS放送に活路を見出しましたが、いずれもその放送がなくなった途端、経営が破綻しました。

 

その結果、生き残った2大メジャー団体はいずれも、オンライン配信によるサブスクリプション ビジネスに進化しているのです。上場企業であるWWEはその点、実に見事ですし、新日本プロレスは親会社のブシロード、木谷オーナーの経営手法が変革をもたらしました。

 

実際に、オンライン配信を開始した2014年に長年の債務超過状態から脱し、2017年7月期の売上高は38億5000万円、純資産額は9億3000万円を記録、以降は無借金経営を継続しているといわれます。

 

産業突然死、ビジネスモデルのデジタライゼーションの波はプロレスにも及んでいて、他業界よりも何気に非常にうまくいっているのが、すごいところです。

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