89年の「格闘衛星★闘強導夢」、
90年の「スーパーファイトin闘強導夢」
に続く東京ドーム・プロレス興行シリーズ第3弾。
1990年4月13日、WWF(現WWE)と全日本プロレス、新日本プロレスのメジャー3団体が共催した「日米レスリングサミット」をご紹介します。
■ビンスWWF 日本侵攻作戦
1989年、ビンス マクマホンJr.率いるWWF(現WWE)は、1984年から開始したハルク ホーガンをエースに据えた全米侵攻作戦も成功し、次なるマーケットとして日本侵攻計画を練っていました。
しかしながらこの時期、さすがのビンスも単独での日本興行開催は難しいと判断し、エージェントの佐藤昭夫氏を通じて馬場 全日本プロレスと接触。
WWFの単独での日本侵攻を阻止したい馬場御大としても、この相談を無下にするワケにもいかず、東京ドームでの合同興行開催がまとまります。
そして馬場御大は猪木の政界進出で新社長に就任した新日本プロレス 坂口征二氏に参加を要請。
1990年1月の記者会見で3団体共催の「日米レスリングサミット」開催が発表されました。
その結果、WCWが心証を害して2月開催の「スーパーファイト in 闘強導夢」へのリック フレアー派遣をドタキャンしたのは前回ご紹介した通り。
本大会の新日プロ勢は所属選手同士のカード提供に留まり、対抗戦は見送られました。
●メインカード変更
当初発表されたメインイベントはハルク ホーガンvsテリー ゴディのWWF世界ヘビー級王座選手権試合。
クラスとネームバリュー的にどう見てもホーガンの勝ちは明らかで、ゴディはプロレスはうまいものの面白い選手ではなく人気もイマイチで、さらにはホーガンが直前のレッスルマニア8でアルティメット ウォーリアーに敗れてタイトルを失いノンタイトル戦に。
当然のようにチケットは伸び悩みます。
そこで全日プロはスタン ハンセンを担ぎ出し、81年から約9年ぶりとなるホーガンvsハンセンのカードに変更。
名実共にWWFと全日プロのエース同士の対決の夢のカード実現!という事で、ようやく盛り上がりを見せました。
Welcome Partyには、本大会には出場しないアントニオ猪木も姿を見せ、馬場御大とガッチリ握手。ホーガン、アンドレ、ハンセンらと久々の再会シーンも見られました。
1990年4月13日金曜日
私は2月の「スーパーファイト in 闘強導夢」に続いて、会場で生観戦した…のですが、前大会に比べてこの大会の記憶が薄くてですね…。
正直、この時期のWWFは大味な「ザ アメリカン プロレス」で、後のストーン コールドはじめとするアティトゥード路線の前夜。
大男のドタバタプロレスの連続で、正直、あまり面白くありませんでした。
●天龍vsサベージ、馬場・アンドレ タッグ、ハンセンvsホーガン
この大会のハイライトは、なんといっても天龍源一郎vsランディサベージの一戦です。
ド演歌、浪花節の香りのする天龍と、ノーテンキなマッチョマンの対戦は当初、ミスマッチ感がハンパなく、噛み合わないのでは?と思いましたが、天龍のアジャスト能力は半端なく、後に名勝負と語り継がれるクオリティとなったのは流石でした。
サベージのマネジャー シェリーの介入や、解説席の徳光アナ、松山千春さんとの一触即発、そしてなんと言っても若林アナの「イカ天とはイカす天龍のことであります!」の名実況を含め、いま観ても面白いのです。
セミではジャイアント馬場とアンドレ ザ ジャイアントが夢のタッグ結成。
長く新日マットでヒールだったアンドレのベビーターンは気持ちよさそうで、この両者が並んでいるだけで絵になります。
ちなみにアンドレはこの日でWWFとの契約が終了し、これ以降は全日プロに参戦。1992年まで余生を過ごしました。
そしてメインイベント。ハルク ホーガンvsスタン ハンセンの頂上対決は、これまた名勝負でした。
ハンセンはいつも通りのラフファイト、それに対してホーガンは日本マット向けに猪木仕込みのグラウンド テクニックを見せ、この辺りの臨機応変さはさすがミスターWWF、という感じがしました。
9年前はハンセンのコピー、エピゴーネンレスラーだったホーガンはすっかり貫禄を身につけ、最後はハンセン必殺のウエスタン ラリアットを狙い突進したところにビッグブーツからアックスボンバー!12分30秒、スリーカウントでホーガン勝利の完全決着となったのは意外でしたが、これでこの一戦の価値は大きく上がりました。
そのほかの試合では、
三沢タイガーマスクがホーガン以降のWWFを支えることになる”ヒットマン”ブレッド ハートとシングルマッチ(20分時間切れ引き分け)。
ジャンボ鶴田は谷津の負傷でキング ハクとタッグを組み、リック マーテル、カート ヘニング組と対戦。かつてAWA世界王座を巡って争った旧敵マーテルからバックドロップでピンフォール勝ちを収めました。
新日勢はライガーvs野上戦と、マサ斎藤・橋本真也組vs長州力・蝶野正洋組のIWGPタッグ戦を提供しましたが…
ハッキリ言ってまるで記憶にありません…(笑)。
いつも通りの、シリアスな試合をやって、何事もなく終わった、という印象です。
日本テレビ中継
この大会は2日後、めずらしい日曜昼から放送され、14.1%の高視聴率を獲得。
ハッキリ言って、当日生観戦よりもこのテレビ中継の方が面白かったのを覚えています。
また、このメインイベントは長らく全日プロ中継を支えた倉持アナウンサーの最後の実況でもありました(メイン冒頭の「東京ドームが瑠璃色の幻影に包まれます」は名実況でしたね)。
その後の両団体
この後、新日からトレードされたスティーブ ウィリアムスが全日プロでゴディと組んで活躍したり、クラッシャー バンバン ビガロが貸し出されたり、と新日、全日プロの友好関係が続き、対抗戦第2弾を!の期待が高まりますが…
90年、衝撃の天龍SWS移籍からの大混乱と、猪木の介入による関係悪化に伴い、この2団体の共闘は実に短いものに終わってしまいました。
対戦カード
日米レスリングサミット
WWF/全日本プロレス/新日本プロレス
1990年4月13日
東京ドーム
観衆53,742人(満員)
第1試合 20分1本勝負
ダグ ファーナス、ダニー クロファット、ジョー マレンコ vs 川田利明、サムソン冬木、北原辰巳
○クロファット(11分26秒 エビ固め)×北原
第2試合 20分1本勝負
獣神サンダーライガー vs 野上彰
○ライガー(8分37秒 片エビ固め)×野上
第3試合 20分1本勝負
ジミー スヌーカ、ティト サンタナ vs 渕正信、小橋健太
○スヌーカ(8分28秒 片エビ固め)×渕
第4試合 20分1本勝負
タイガーマスク vs ブレット ハート
タイガー(20分時間切れ引き分け)ブレット
第5試合 20分1本勝負
ザ グレート カブキ vs グレッグ バレンタイン
○カブキ(7分16秒・エビ固め)×バレンタイン
第6試合 20分1本勝負
ジェイク ロバーツ vs ビッグ ボスマン
○ロバーツ(10分25秒・体固め)×ボスマン
第7試合 IWGPタッグ選手権試合
60分1本勝負
マサ斎藤、橋本真也(チャンピオンチーム) vs 長州力、蝶野正洋(チャレンジャーチーム)
○橋本(13分0秒 片エビ固め)×蝶野
第8試合 60分1本勝負
ジャンボ鶴田、キング ハク vs リック マーテル、カート ヘニング
○鶴田(10分53秒・体固め)×マーテル
第9試合 60分1本勝負
天龍源一郎 vs ランディ サベージw / センセーショナル シェリー マーテル
○天龍(10分49秒 エビ固め)×サベージ
第10試合 WWF世界ヘビー級選手権試合
60分1本勝負
アルティメット ウォリアー(チャンピオン) vs テッド デビアス(チャレンジャー)
○ウォリアー(6分12秒 体固め)×デビアス
セミファイナル 60分1本勝負
ジャイアント馬場、アンドレ ザ ジャイアント vs デモリッション(アックス&スマッシュ)
○アンドレ(6分39秒 体固め)×スマッシュ
メインイベント 60分1本勝負
ハルク ホーガン vs スタン ハンセン
○ホーガン(12分30秒 片エビ固め)×ハンセン
完
コメント
舞台。そうですねー。今の良くて後楽園、もしくは新宿などで、客に足元見られちゃってる感の、賞味期限切れの夢だったカード連発には、勿体無いなーって思ってます!
しかし、WWEも現地行ってるなんて!私は、3.1横アリ、ロックが唯一ですよ。
楽しみにしてます!
天龍対サベージは、天龍DVDに、絶対入れたい試合ですよねー!(まぁ、動画で見れますが。)これ、その後も行われてますが、やはりこの舞台でないと。後、シェリーマーテルなしでは成立してなかったと思います! この頃は、イエローパンツのホーガンと、一番黒パンのホーガンは別物!みたいにWWFを見下してましたねー。 新日 全日、若手だけでも対抗戦すれば良かったのに!と思いましたが、当時の新日の若手って、飯塚 松田位ですよね?以外と人材いない。 後は、ウ~~ウォリアー!ウ~~デビアス!ですか。 本当、90年はプロレスファンにとっていい時代!
天龍とサベージは、あれ以降も行われたみたいですが、やはりあの舞台の、あの時期の天龍との1戦に尽きますね。そういう意味では、プロレスは団体や会場など、「舞台」というのが大事だなぁと思います。この興業での新日本の立ち位置はほんと微妙でした。やはり対抗戦は若手であっても難しかったんでしょうけど、それにしてもタッグタイトル戦は空気でしたよ。そして、WWE(当時はWWF)の試合は、お世辞にも面白いとは言えませんでした。それが数年後に、アティトゥード路線で大爆発するんですからわからないものです。このアティトゥード路線については、現地生観戦レポートを交えて、近日ご紹介します!