「獣神サンダーライガー」引退記念~1984-2020 私はなぜライガーが「キライ」だったのか

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プロレス
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2020.1.5東京ドーム大会で、新日本プロレスの獣神サンダーライガー選手が引退しました。

 

昭和の猪木、藤波、長州時代から三銃士、平成の第3世代、そして棚橋中邑オカダ内藤ら再ブレイク中の令和の現代まで、36年の長きに渡り新日本プロレス一筋

 

その間、ジュニア王座を巡る多くの名勝負、異種格闘技戦、みちのくなど他団体まで巻き込んだスーパージュニア開催、WCWなど世界でも名を馳せ…キャリアも功績も、他のどの選手にも勝るとも劣らない、ビッグネームかつリビングレジェンドです。

 

…にも関わらず。

 

私はライガーが長いこと、どう評価したらよいものか…というより、ズバリ言って「大キライ」な時期がありました。

 

なので、筆が進まないのが正直なところなのです。

 

どう書くべきかさんざん迷いましたが、時系列で足跡を辿りながら、その功績と、私がライガーのどこに違和感を感じていたのか、そのまんま、正直に思うところを書きつづります。

 


 

●山田恵一という若手選手

 

素顔時代の山田恵一選手は1984(昭和59)年にデビュー。「プロレスが好きだ」という気持ちが全身から溢れ出る、ものすごい練習を積んでいることが一目でわかる、表情豊かで実に応援したくなる選手でした。

小杉選手、後藤選手との2年連続でのヤングライオン杯決勝、船木選手との骨法を駆使したシングルマッチ、総帥 アントニオ猪木にパートナーに指名されたり、藤原道場の門下生としてドン ナカヤ ニールセンとの格闘技に抜擢されるなどして頭角を現し、なにかと目立つ存在だった頃から、リアルタイムで目撃しました。

 


 

●ライガー登場

 

1989(平成元)年4月24日。新日本プロレス初の東京ドーム大会で、全身を包んだコスチュームの「獣神ライガー」に。

小林邦昭選手を敗ったデビュー戦を生観戦しましたが、最初から正体モロバレで、かつカッコ悪いマスクで、手足の短いずんぐりむっくり体型で私の感想は「なんだかなぁ」でした。

 

「大人気アニメのキャラクターがレスラーに」と言われても、アニメの「獣神ライガー」は知名度も人気もいまひとつでしたし、世代的にそういうノリはもういいよ、というのが正直なところ。「アステカイザーじゃん」とも思いました。

 

その後、マスクとコスチュームがどんどん洗練されて、いまのスタイルに。その頃にはすっかり見慣れて、実際、カッコよくなりました。早々にライガーはアニメから独り立ちして、オリジナルのプロレスラーになっていきました。


 

●コスプレ臭の強すぎるいでたちに違和感

 

いまではさほどめずらしくもありませんが、当時はツノがついてるのが危なっかしく、表情豊かで素晴らしい肉体美を誇る山田恵一選手の良さを根こそぎ奪う、目も口も上半身も見えないスタイルも、どうにも納得いきませんでした。

 

視界もスタミナも奪う全身タイツで試合する、しかもツノ突き、というのがコスプレ濃度が濃すぎてイヤだったんですよね(同じ理由でTシャツ着たまんま試合するレスラーもアホかと思います)。

 

どこの世界にわざわざ動きにくく、見えづらく、疲れやすいスタイルで試合するアスリートがいますかね。あれだと「プロレスはヒーローショーです」と言ってるようなもんだ、と感じていました。

 

唯一、髪の毛出すのはよいアイデアだと思いましたが(いまではもうつけ毛ですけど)。

 

しかし視界も悪く、呼吸も苦しいあの全身コスチュームでまさか引退まで完遂するとは、思ってもみませんでした。この点は“スタミナオバケ“のライガーならではのスゴさ、だと思いますし、貫き通した点は「立派」と言うほかありません。

 


 

●ジュニアの盟主に

 

その後、佐野直喜選手とのライバル対決で名勝負を連発。早々に黒星を喫して、マスクまで剥ぎ取られ素顔を露わにしながらも戦い続けました(この辺でライガー卒業したらいいのに、と早くも思ってたのは私ぐらいですかね)。

その後、ペガサスキッド(クリスベノワ)、ブラックタイガー(エディゲレロ)、エルサムライなどとのライバル対決、大谷選手や金本選手、高岩選手など後輩世代の引き上げにも尽力しました。

 

青柳選手や鈴木みのる選手との格闘技戦や、橋本真也との階級を超えた戦いをする、振り幅の大きさも魅力でした。

しかし。個人的に「いざという時だけ上半身裸でメッシュのないマスク」なのもイヤでした。その時だけ本気で、通常時はインチキに見えるからです。だったらそのまんまでやるか、普段もそのスタイルでやって欲しかった

 

その一方、本流の流れではみちのくプロレスなど他団体の選手を招聘してザ グレート サスケ、スペル デルフィン、そしてウルティモ ドラゴンらを一躍有名にした「スーパージュニア」大会を開催し、プロデューサーとしても活躍。

 

その後、海外にも遠征してザ グレート ムタと並ぶ、WCWでのビッグネームにもなりました。ヒールターンして黒い時期もありましたね。

 

その後、ライバル達が次々と新日マットを離れ、ライガーはベテランの域に。みちのくから移籍した5代目タイガーマスクと組んでのタッグ戦が定位置になりますが、常に新日ジュニアの中心選手であり続け、コンディションも保ち、日々の節制とトレーニングを欠かしていないことは、コスチュームの上からでも一目で分かりました

 

▼ベストバウト総選挙

 


 

●数少ない歌入り入場テーマ曲の名曲

 

ライガーはデビュー以来、一貫して同一曲で一度も変えていません。コロコロ変えるレスラーが多い中、その点は好きですね。

 

そしてこのテーマ曲、イントロからすぐソレとわかり、楽曲のクオリティも高いんですよね。歌入り入場テーマ曲はたいがいダサいものですが、ライガーのテーマは出色の出来だと思います。

 

▼名場面付きテーマ曲

 


 

●改めて・・・なぜ私はライガーが「キライ」だったのか

 

ライガーの希有なところは、目も口も覆われたマスク姿なのに、表情豊かなところでしょうね。

特に地方会場ではライガーが登場すると場内が一気に温まる、そんな存在でした。

 

繰り返しになりますがライガーは誰よりもプロレスを愛していて、誰よりも新日本プロレスとジュニアヘビー級に貢献して、常にカラダと試合のクオリティをキープし続け、おまけに世間での知名度もバツグン。

 

褒めるところしかない選手です。

 

でも…私はずっと、ライガーが何故だか好きになれませんでした。

 

何故なのか。

 

改めて考えてみるに、強さにこだわることを言う割に大一番ではよく負けるし、自我が強そうなのに引き立て役も進んでやるし、新日本が一番だ!と言いつつ他団体の選手にもコロコロ負けてあげる。

 

「相手の良さを引き出す、それがプロレスラーとして素晴らしい!」のでしょうけど、なんか違う、とずっと違和感があったんですよね。

 

うまく説明できませんが、強いて言えば「ライガーはプロレスを誰よりも愛しているのはわかるけど、その愛してるプロレスが私の好みと違う」ってことなんですかね。

 

特に全盛期のライガーは「ブッ殺す」みたいなチープなセリフをギャーギャー吠えるギラギラしたキャラと、言ってることとやってることが違う「物分かりのよさ」が鼻について、ものすごくキライだったのです。

 

ライガーのプロレスは「楽しい」のか「強い」のか、どっちがやりたいの?がずっとわからなかった(どっちもうまいことやってるから人気があるのは承知の上で)。

 

相手とか観客とかジュニア、プロレス界全体を考えるのではなく、ライガー、というより山田恵一選手の素の感情をさらけ出す試合が観たい。若手時代の素材の素晴らしさを知ってるだけに、ずっとそう思っていたのかもしれないですね。

 

やがて一線を引いてその「ギラギラ感」がなくなり、バラエティの罰ゲームで吊り天井や掌底をするライガーを素直に笑えるようになり、プロレスの存在を世間に伝える役割になってからは、むしろ好きになりました。

 

そして引退。年齢的にもうシンドイのは当然ですし、本人さえその気ならお約束的なスタイルでまだまだやれるのにそれをよしとしないのは、いつまでもドタドタしながらいつまでもリングに上がり続ける他の選手に比べれば潔いな、と思います。

 

やっぱりライガーがいなくなる、というのは寂しく感じます。いるのが当たり前でしたから。

なんだか煮え切らない感想ですが、これがライガー引退における、私の正直な感想です。

 

ともあれ36年の長きにわたり、あの体格で大きな怪我もなく、最後まで「獣神サンダーライガー」のスタイルを貫いた山田恵一選手、お疲れ様でした。

 


 

●余談:プロレスラーの「引退」について

 

ちなみに。

 

私はプロレスラーは引退なんかしなくていいと思います。引退するなら絶対復帰して欲しくないのですが、ほとんどの選手はすぐ復帰するからです。

 

私はそのたびに心底、幻滅します。どんなもっともらしい理由を付けても、ファンから引退名義で木戸賃取って興業打って、感動させておいての復帰は「詐欺」でしかありません。

 

なにより「プロレスはそもそもいい加減なもので、本気で観るだけアホらしい」とプロレスラー自身が思わせてどうすんの、と幻滅するんですよね。

 

だったら引退なんかしないで、シニアリーグを作って、明るく楽しい、お互い怪我しない範囲の「エキシビジョンマッチ」をし続ければいい。

 

その代わり、現役バリバリの選手とは絡んで欲しくない。

 

私は現役バリバリの若手が、ビッグネームのロートルの先輩レスラーに気を使って負ける接待プロレスが大嫌いなのです。

 

いまでいう「プロレス暗黒のゼロ年代」はそればっかりでした。「PRIDEなど総合格闘技のブームがプロレス人気を衰退させた」と言われてますが、私はそれだけじゃないと思います。三銃士と四天王ほか40歳を超えたベテラン勢がいつまでもトップを張り続け、勝ちを譲らなかったのが最大の自滅でした(それを覆すパワーと華のある若手がいなかったのもありますが)。

 

プロレスは純粋なスポーツではないスペクタクルスポーツであるが故に、ベテランが「昔の名前」でいつまでもリングに上がり続けられる反面、それが現役バリバリの若手選手の活躍の機会を奪い、観客に裏の仕組みを知らしめてしまう毒薬でもあるわけです。

 

「M1グランプリ」が結成10年(現在は15年)以内、が参加要件であるようにプロレスラーは相手に気を遣わせたりするようになったら自ら一線を引いて、シニアリーグに回るべきなのです。

 

無茶苦茶な運営でブラックを通り越してマッドな団体である、かつての全日本女子プロレス。「25歳定年制」は素晴らしい仕組みでした。

 

こう書きながら、棚橋選手の今後が気になっています。

コメント

  1. W・D・ウエイト より:

    今年もよろしくお願いします。

    旧日プロや猪木全盛期を夢中で観てた身としては
    お金払ってでも(以下省略)
    勝敗はどうでも良いのですが結局個々のレスラーの強さを求めたり、想像してしまうという昭和プロレスに凝り固まった思考の人間には好みが違いました。
    日付も細かい内容も?ですし、あやふやな回想です。
    20年かもっと前に記者(今思うと少しトッポイ人だったのかも)が「グレイシーの奴らやっつけちゃってくださいよ」風の問いというか議論?に元気良く
    「バカ野郎ぉぉぉ~!俺たちは芸術やってんだぁぁぁ~!
    俺とやりたきゃこっちへ来いってぇぇぇ!!叩きのめしてやるぅぅぅ!!!」チックな答え。
    “聞き手の質問違うよ~。そりゃそれなら腕折られる心配無いし、何回に1回かは勝つ役も貰えるだろうしさけど・・ガチしか出来ない相手に信頼関係ってw”
    飲んで少々盛り上がった微かな記憶が・・
    ズレますが当時果敢に散っていった桜庭登場以前のレスラー達って、凄いチャレンジをしてたのだなと今改めて・・です。

    基本の仕組みは変わらずとも日本のプロレスって『ある時』を境に遺恨、因縁大好きな闘いのドラマから、みんな仲良く学芸会、器械体操のテイストに完全に舵を切った認識です。勿論個々の好みですし両方好きだよだって方も多いのでしょうが前者の私は離れました。

    長くなりました。再びのロマンでまた・・です。

    • MIYA TERU より:

      いつもありがとうございます。
      「基本の仕組みは変わらずとも日本のプロレスって『ある時』を境に遺恨、因縁大好きな闘いのドラマから、みんな仲良く学芸会、器械体操のテイストに完全に舵を切った認識です。勿論個々の好みですし両方好きだよだって方も多いのでしょうが前者の私は離れました。」
      まさしくそうですね。最近、TAJIRIさんの書籍が話題になっていますが「バッドエンド」もなくなりました。良し悪しは別として、「プロレスはいったい何を観客に見せているのか」の定義が変わったのだと思いますね。時代と共に進化するのは大切ですが、劣化して欲しくはないですね。

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