今回は、昭和特撮、東映・石ノ森ヒーローシリーズ。
1976(昭和51)年に放送された「宇宙鉄人キョーダイン」の魅力を、当時の時代背景と共に解説します。
「宇宙鉄人キョーダイン」
1976年4月2日-1977年3月11日
TBS系列
制作 毎日放送/東映
毎週金曜19:00 – 19:30
全48話
ストーリー
ロボットが支配する星、ダダ星がロボット軍団を編成して地球侵略を開始。
葉山博士はこれを阻止せんと、二人の息子・譲治と竜治の人格をコピーした「サイバロイド」、スカイゼルとグランゼルを開発。
鋼鉄の兄弟「宇宙鉄人キョーダイン」として地球に残された末の弟・健治を守り、侵略ロボットに戦いを挑む・・・という物語です。
ポスト「仮面ライダー」
ネット局腸捻転解消でTBS系に異動した「仮面ライダーストロンガー」が、1975(昭和50)年末をもって終了。長く続いた仮面ライダーシリーズも、いったん終焉となりました。
その一方で、NET(現・テレビ朝日)系の「秘密戦隊ゴレンジャー」は、人気絶頂。
東映としてはTBSに対し「ポスト仮面ライダー」企画を立ち上げる必要に駆られます。
そこで誕生したのが本作で、当初は2人兄弟のロボットヒーロー「鉄人兄弟 スカイブラザー」というタイトルでした。
しかしそこはやはり東映。「キカイダー」「ゴレンジャー」「アクマイザー」の流れを組み、日本語の「キョーダイン」になりました。
ちなみに・・・このタイトルには「“一京ダイン”の力という意味も込められていた」(「ダイン」は力の単位by石ノ森先生)のだそうですが、そんなことは当時、まったく知りませんでした(笑)。
そう言われれば確かに、ささきいさおさんが歌うエンディングの歌詞に「一、十、百、千、万、億、兆、京」とありましたね。
それよりも問題は、我々世代はホントは「京(けい)」と読まないといけないこの単位を、「京(きょう)」で覚えてしまったことなのでした・・・
時代背景と差別化要素
本作の放送枠、TBSの金曜夜7時は、これまで長く、ウルトラシリーズが放送されていました。
また、この当時「宇宙戦艦ヤマト」、NHK「少年ドラマシリーズ」、「600万ドルの男」「バイオニックジェミー」など、シリアスで緻密な設定のSFモノ人気が高まっていました。
本作は、仮面ライダーシリーズよりさらに低年齢の「小学校低学年」をターゲットに据えた番組でしたが、その特長は、
●東映ヒーローでは意外と珍しい「兄弟モノ」であること
かつ、
●“変身モノ“からの脱却を目指した、かなり凝ったSF設定
です。
主役の「スカイゼル」と「グランゼル」の2体は単なるロボットではなく、長男と次男の人格をコピーした、「サイバロイド」。これって、いまでいうところの「アバター」ですね。
そして、ヒューマノイド:本体である兄の譲治は、「突撃!ヒューマン」の夏夕介さん。弟の竜治は、「仮面ライダー2号」の佐々木剛さんがそれぞれ、演じました。
そして、最大の特長が、兄がスカイジェット(飛行機)からスカイミサイルに、弟がグランカー(発射台付きのクルマ)からグランミサイルに、それぞれ変形するというメカニック要素。
兄がミサイルで弟がクルマで充分なのに、結局両方飛ぶんかい!なのは、いささか詰め込み過ぎですねw
そして、敵の巨大ロボと迫力のメカバトルが展開される・・・予定でしたが、予算と制作時間がかかり過ぎるこのプランは番組開始早々(6話まで)に頓挫し、15話からは“仮想人格”としての人間体が登場。
一見すると、フツーの“等身大の変身モノ”になってしまいました。
幼少期の私は当時リアルタイムで見ていて「ロボットの顔にTVがあり、そこに本人が(遠隔で」映る」という設定がなんともなじめず、普通に人間が出てロボットに“変身“する方が、嬉しかった記憶があります。
しかしこれ、いま見るとZOOMのWeb会議を先取りしてる感がありますね。
ちなみに本作には、若き日のみっちーことアニソンの女王、堀江美都子さんが出演していました。
・・・というより、いまやキョーダインといえば堀江美都子の白川エツ子目当て、という大きなお友達がたくさんいます。
「花つみの歌」&食事シーン
本作を語る上で必ず挙がる「花つみの歌」の謎。
最初こそ、この謎解きが重要なテーマとして描かれますが、いつの間にか、触れられなくなり・・・。忘れた頃に最終回で伏線を(唐突かつ強引に)回収しました。
また、キョーダインのシュール過ぎる食事シーンも有名です。
主題歌
op「宇宙鉄人キョーダイン」
作詞 – 石森章太郎 / 作曲・編曲 – 菊池俊輔 /
歌 – ささきいさお、こおろぎ’73
ed「キョーダインとは俺たちだ」
作詞 – 八手三郎 / 作曲・編曲 – 菊池俊輔 /
歌 – ささきいさお、こおろぎ’73
主題歌は「仮面ライダー」でおなじみの菊池俊介さんですが、珍しいメジャー調の明るい楽曲+ささきいさおさんとのコンビが、当時は新鮮でした。
玩具展開
本作はロボット、メカニックものということで、ポピーからたくさんの商品が展開されました。
超合金の2体とゴンベス、ポピニカからバイク2種。
そしてなんといってもこの「スカイミサイルとグランカー」のセット。コレを買ってもらうつもりが、親が間違えて
この「スカイジェットとグランミサイル」の方を買ってきてしまい、子どもが「違う」と泣きわめくという悲劇が、あちこちで起きました。
俗にいう「変身ベルト」もありました。パッケージには「キョーダインベルト」とあり、「変身」とは書かれてませんね。
作風を巡る試行錯誤
本作は初期こそ凝りに凝ったSF設定や、兄たちと離れ離れになった末弟・健治の心情、それを支える周囲の人々のヒューマンドラマが描かれ、前後編や3話完結で展開されましたが、
やはり中盤からお約束の「視聴率UPのためのテコ入れ」が発動。
前述の人間体からの変身要素の復活や、ゴレンジャーやロボコンを意識したコメディ要素、分かりやすさ重視の1話完結が増え、
夏休み時期には怪奇シリーズも展開されるなど、なかなかのカオスです。
しかしながら当時としては珍しくレギュラー陣が途中降板もなく最後まで登場し、後半に登場した闇将軍ガブリンをはじめデス五人衆、ガブリンクィーン、そして黒騎士ブラックナイトなどダダ星からの強敵が次々と現れ、盛り下がることなく1年間、全48話が完結しました。
最終回
最終回では前述の通り、「花つみの歌」の謎が復活。
その謎解きがカギとなり、ダダ星侵略ロボット軍との最終決戦に。
そして、ダダ星からの脱出に成功した父の葉山博士、キョーダインの本体である譲治・竜治と、弟の健治が再会。
最後はキョーダインが2人の身代わりとなって敵に特攻、壮烈な最期を遂げて、物語は完結しました。
おわりに
今回は、東映・石ノ森ヒーローズ、1976年の「宇宙鉄人キョーダイン」を取り上げました。
改めて詳しく調べてみると、当時は理解できなかった細かなSF要素の
奥深さに唸らされると共に、他のヒーローものとはとにかく違う路線を目指した、ユニーク過ぎる意欲的な作品だったことを、改めて知りました。
仮想人格、超エネルギー粒子ダダニウム、サイバグラフィーなどなど、いまの技術でリメイクしたら面白い作品になる気がしますね。
といっても、仮面ライダーフォーゼが登場したとき「スカイゼルに似てる!」と話題になり、
劇場版にリデザインされたキョーダインが登場しましたが・・・
コレじゃない感が凄かったです。なんでこうゴテゴテしたがるのか・・・。
なのであくまでも昔の思い出のまま、懐かしむくらいがよいのかもしれません。
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