今回は仮面ライダー シリーズ 第4作にして、昭和ライダーきっての異色作、「仮面ライダーアマゾン」をご紹介します。
「仮面ライダーアマゾン」
1974(昭和49)年10月19日〜1975(昭和50)年3月29日
NET系
毎週土曜19:30 – 20:00
全24話
制作 毎日放送/東映
言わずもがな、どう考えても名前つながりのダジャレとしか思えないAmazon プライムビデオ番組「仮面ライダーアマゾンズ」(2016)の原典作品です。
「アマゾン」がシリーズきっての異色作となった理由
それは、『前作「仮面ライダーX」が試行錯誤及ばずヒットしなかったため』と言われています。
しかし、そりゃ「仮面ライダーV3」が超が付く異常人気だっただけで、いくらなんでもXが可哀想です。確かに、「仮面ライダーX」はV3に比べればいささか地味でしたが、カッコよくて人気もありましたし、みんなXを応援していましたよ。しかし、大ヒットシリーズ故の悲劇・・・「仮面ライダーX」が視聴率の数字として期待にそぐわなかったのは事実なのでしょう。
そして、そんな制作サイドの思惑など知るはずもない当時の私を含むちびっこ達は・・・
この新たな仮面ライダー「アマゾン」の誕生に心底、”衝撃”を受けたのです。
●ちびっこドン引き!超過激設定!
まず、主人公がハダカ!
アマゾンから日本に帰ってきた「山本大介」は野生児で、スタート当初は上半身ハダカで腰ミノ姿。
「仮面ライダー」なのにバイクに乗らない!(当初は)
きわめつけは日本語が話せない!
「こんな仮面ライダーはイヤだ!」のフリップネタのようです。
そして・・・戦い方がグロい!
キックやパンチ、チョップではなく繰り出すワザはひっかき、噛み付きという悪役レスラーのような凶暴ぶりで、トドメは“大切断“で赤や青や緑やオレンジの血しぶきブシュー!
…親から「晩ご飯どきにこんなの観るのやめなさい」と止められるどころか、いまなら即BPO案件かもしれません。
そして、番組開始当初のストーリーラインは「言葉や文明を知らない主人公が、周囲の誤解に耐えながら孤独に闘う」
…なんとも言えません。今となれば、よりによって超人気番組の「仮面ライダー シリーズ」で、こんなチャレンジングな設定をやらかした制作陣の勇気に拍手を送りたいところですが…
当時のちびっこ達は「ドン引き」でした。
●徐々にまろやかに改修
そんな「アマゾン」は立花のおやっさんからバイクをプレゼントされ(それもまたドギツイヤツを)
無免許ながら野生の勘で乗り回し始め、ようやくライダーらしくなります。
▲見たか、乗ったぞ!ジャングラー!ヤバいフォルムです
加えてモグラの相棒が登場(5話)し、コミカルなシーンが増え、上着を着るようになり(9話〜)、カタコトながら日本語を話すようになります(13話にもなってですが)。
ちなみに当初の唯一の理解者、“トモダチ“のマサヒコを演じたのは子役時代の松田洋治さんです。この子が視聴者のちびっこ達と、アマゾンをつなぐ大事な役割を果たしていました。(松田洋治さんは後に映画「もののけ姫」のアシタカの声を演じたお方でもあります)
▲2016年、DVD-BOX発売記念でおよそ40年ぶりに再会したお二人
そして不思議なもので、見慣れてくるとアマゾンのフォルムが、なんともカッコよく思えてくるのです。
そして跳躍して敵を容赦なく引き裂く戦いぶりに爽快さを感じるように…
中盤以降、敵組織が変わってからはさらにテンポアップしたアクションが増え、ちびっこ人気も高まりました。
▲ポピー変身ベルト「コンドラー」CM
●企画意図
本作は企画書に「原点回帰」と書かれた最初のライダー作品と言われます(もはや原点回帰を通り越して異次元ですが)。
確かに「仮面ライダー」はスタート当初は「怪人」と戦う、怪奇、ホラー テイストでした。
企画当初は当時人気のカンフー、ブルースリーなどの要素を加える計画もあったそうですが(「仮面ライダードラゴン」)、南米アマゾンと古代インカ文明をモチーフとした「アマゾン」となりました。
マスクのデザインは初期ライダーが昆虫モチーフなのに対し、どうみても爬虫類。「マダラオオトカゲの能力を持つ」とされました。
●主人公
主演は岡崎徹さん。1974年、日活制作のアクションドラマ『電撃!! ストラダ5』で主役を務めた方です。
私は個人的に、ご本人は果たしてオーディションを受けた時からこんなトリッキーなライダー役だと知っていたのか?と長年疑問でしたが…岡崎さん曰く「自身が『ターザン』や『狼少年ケン』が好きで、「ターザンのような異色の仮面ライダー」ということで「これなら演ってみたい」という衝動に駆られ主演を決心した」とのこと(ホントかよ!)。
さらにはオーディションではなく、東映の伝説の営業マン、渡邊亮徳氏の推薦だったのだそうです。
また、上半身ハダカのスタイルも「ブルース リーもそうだし、違和感はなかった」そうですが…放送当時は「2話目か3話目でスーツ着せるから、と言われていたのに最後までハダカだった」と愚痴っていたとか(東映の名プロデューサー平山亨氏の著書「泣き虫プロデューサーの遺言」より)。
岡崎さんは次作ドラマ「非常のライセンス」出演中にバイク事故で脚を骨折、そのまま芸能界を引退。地元福岡でスナックを開いていましたが閉店し、長く消息不明に・・・しかし2005年に自伝本『アマゾンから帰ってきた男』(星雲社)を出版。
近年では特撮系のイベントにも出演するなど、ご健在です。
●”打ち切り”ではなく「腸捻転」解消
また、本作は全24話と昭和ライダー作品中でも異例の短さ。そのため「打ち切られた」と誤解されていますが、当初からこの話数だったそうで、スタート前の告知にも明記されています(その割に平山Pは「事前に分かってたらもう少しやりようがあった」と発言されてて謎ですが)。
そしてその短縮の理由は、本blogでも過去に何度か紹介した「腸捻転」にあります。
「アマゾン」はテレビ朝日系列で放送された最後の昭和仮面ライダーシリーズ。
この当時、
・毎日新聞社系の毎日放送(MBS)が朝日新聞社系の日本教育テレビ(NET/現 テレビ朝日)と
・朝日新聞社系の朝日放送(ABC)が毎日新聞社系の東京放送(TBS)と
それぞれ系列を組んでおり、俗に「腸捻転」と呼ばれていました。
そのため、これまでの「仮面ライダー」シリーズは毎日放送が制作して、NET系列で放送されていたのです(ややこしい)。
これを解消する時期の影響で「アマゾン」は24話で終了。
次作「仮面ライダーストロンガー」から、毎日放送制作、TBS系列ネットになります。
→「仮面ライダーストロンガー」はコチラ参照
一方、NET系列は空席となったこの番組枠で、いまのスーパー戦隊シリーズの元祖となる「秘密戦隊ゴレンジャー」がスタートしました。
●昭和トラウマの代表格「十面鬼」
アマゾンの当初の敵、秘密結社の首領がこの「十面鬼ゴルゴス」。
自分の下半身と9人の悪人の頭部を埋め込んだ異様な見た目と、残忍凶悪な性格は数あるヒーローものの敵キャラの中でもインパクト大。見事に当時のちびっこ達のトラウマになりました。この醜悪なモチーフは1973年に公開されたイギリス映画「未来惑星ザルドス」からの着想と言われていますが、実はこの十面鬼、14話で死亡して組織ごと壊滅しているのです。その後アマゾンは別の敵組織と戦うのですが、そんなことちっとも覚えていない程、「アマゾンといえば十面鬼」なのです。
●主題歌、エンディング
ビートと疾走感溢れる菊池サウンドの名曲です。
op「アマゾンライダーここにあり」
作詞:石森章太郎 / 作曲:菊池俊輔 / 歌 :子門真人
ed「アマゾンダダダ!!」
作詞:八手三郎 / 作曲:菊池俊輔 / 歌 :子門真人、コロムビアゆりかご会
2号以来、久々の子門真人さんの雄叫びが冴え渡ります。
“正義のためなら鬼となる“
“友よお前のためならば“
1番から3番まで、韻を踏んで本編のコンセプトと特長を見事に紹介する歌詞、ビートの効いた楽曲、“アマゾン“らしさ爆発のアレンジ共に、昭和ライダーシリーズ屈指の完成度だと思います。さらに、「子門真人さんの唄う仮面ライダー主題歌」はこれがラストとなりました。
昭和のくくりを外して、平成シリーズまでを含めても、本作の立ち位置は異色です。なんといってもキャラデザの突き抜けっぷりは素晴らしい。
「安定よりも挑戦」。そんな昭和特撮の制作陣の矜持を感じる、怪作であり、傑作です。
<関連リンク>
昭和特撮 1960〜70年代 特撮ヒーロー 総まくり!
コメント
どうもアマゾンのモチーフはピラニアらしい
ただ当時は今と違ってネットなどないのでトカゲにした説がありまして・・・
そう考えるとジャガーショック(噛みつき)大切断(ヒレで切る)もピラニアモチーフだと納得できる。
トカゲは噛み付かないし、当然ヒレもない。
なるほどね。
おかわりいただけるだろうか?
コメントありがとうございます。なるほど!確かにピラニアだとアマゾンですし、必殺技もしっくりきますね!勉強になりましたw