遠い異国の地で、熱狂的に愛され続ける日本のアニメ、特撮・・・
世界各国で「なんでコレが?」という日本の、それも昭和の作品が超人気で知名度バツグン、というのが結構あります。
今回はそんな昭和タイトルを、集めてみました!
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UFOロボ グレンダイザー
フランス
1978(昭和53)年、フランス国営テレビで放送が開始された「UFOロボ グレンダイザー」。現地でのタイトルは「UFO Robot GOLDRAK」です。
なんと驚異の平均視聴率75%、最高100%*を記録し、その後起こった「ジャパニメーションブーム」の口火を切った作品として知られています。
*時間帯による占有率/世代別の集計(子供のみ)、当時テレビ局が3つしかなかったそうです。
放送が終了したら抗議が殺到して翌週からまた再放送、という超人気ぶりで、キャラクターグッズが大ヒット、現地作家によるコミックス化、新聞も発行・・・日本では販売されなかった敵役の玩具やグッズまで飛ぶように売れたそうです。
原作者の永井豪さんは、2019年にフランスの芸術と文化への貢献が評価され、フランス政府から芸術文化勲章「シュバリエ(騎士)」が贈られています。
2021年2月にはフランス「Microids」社から新作アクションゲームの開発が告知され、9月に「放映45年記念展覧会」がパリ日本文化会館で始まるなど、いまなお大人気を誇っています。
OPやEDはオリジナルをアレンジした楽曲で、いま40代〜50代のフランス人の知り合いがいる方は、一緒に歌ってみてください(笑)。
イタリア
視聴率70〜80%超えと、イタリアでのフィーバーぶりもフランスに劣らず凄まじく、このブームを「ゴールドラキズム」と呼んでいたそうです。
イラク
1982年から夕方6時に放送され、放送時間になるとイラク中の路地から子供たちの姿が消えた、と言われる程の大人気だったそうです。
宗派や民族をめぐる争いの絶えないイラクでは、「国民が唯一共感、一致できる話題は、サッカーかグレンダイザーしかない」というジョークまであり、政府内で新国旗のデザインを巡って各勢力が対立していたとき「国旗をグレンダイザーにしたら誰も反対しない」との意見が出たほど(笑)。
日本では「マジンガーZ」「グレートマジンガー」に続く3作目で、全2作に比べれば人気・知名度共にやや落ちる「グレンダイザー」ですが、世界的には圧倒的な人気・知名度なのが、面白いところです。
きっと秋葉原にやってくるフランスの方は「日本はゴルドラックの国だ!」という方も多いのでしょうが、フランスの方がグッズ多いのではないでしょうかね…でも「超合金魂」とか見たら興奮して飛び上がるくらいのクオリティだからいいのか(笑)。
マジンガーZ
スペイン
グレンダイザーの先輩、源流ともいえる「マジンガーZ」は、スペインで絶大な人気を博しました。
日本では1972(昭和47)年にテレビ放送開始された本作、スペインでは1978(昭和53)年から放送が開始され、視聴率70%超えの大人気!
現地作家によるオリジナルコミックス、新聞まで出版されています。
スペインには、マジンガーZの巨大な像があることも有名です。
巨大な像があるのは、バルセロナの西100キロにある村、カブラ・デル・カンプの公園。高さ約10メートルで鉄筋の骨組みで、グラスファイバーの装甲製の像です。
管理を担当する同役場によると、建設に関する記録が残っていないため
正確な日付は定かではないものの、アニメ放送と同時期の1980年代に作られたそうで、当時、付近の開発を進めていた業者が、新区画の魅力アップを図るために設置したものだったのだとか。
現在も40代の男性を中心に家族連れなどで賑わうほか、毎年8・9月にはマジンガーZのファン集会が開催されています。
村長のサルバドール・ペレス氏曰く「この村はマジンガーZがいるところだと広く認知されていて、スペインだけではなく他国からも見に来る人たちがいる。我々にとってマジンガーはとても大事なもの。近く選挙があって私は再選を目指しているが、この一帯の整備と像の保存を公約の一つに掲げている」
そのほか、最近でもエクアドルで行われた張りぼてのコンテストで
「14.5メートルのマジンガー像が優勝した」とのニュースも…。
鋼鉄ジーグ
イタリア
「30代後半〜40代のイタリア人なら、必ず知っている」のが「鋼鉄ジーグ」です。
1979年に「Jeeg Robot D’acciaio」というタイトルで放送され、社会現象ともいえる一大ブームを巻き起こしました。
2015年には、ジーグにちなんだ実写映画「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」が公開。
この映画は、日本製アニメのリメイク・実写版ではなく、オリジナルストーリーの実写映画。「偶然身に付けた怪力パワーを鋼鉄ジーグに例えて、その超人的能力を悪に使う・正義に使う?」という物語です。
この「鋼鉄ジーグ」は、日本ではどちらかと言えばややマイナーな作品で、視聴率は振るいませんでした。
日本での放送順は、
1972「マジンガーZ」~
1974「グレートマジンガー」~
1975「UFOロボグレンダイザー」。
1974には「宇宙戦艦ヤマト」が放送され、アニメが大人向けにシフトし始めた時期でした。
「鋼鉄ジーグ」は、1975年放映開始、勧善懲悪のお子様向きストーリーだったことで玩具ターゲットとなる狭い年齢層以外の視聴者層を獲得できなかった、と言われています。
しかし、イタリアでの放送順は
1978「UFOロボグレンダイザー(UFO Robot Goldrake)」~
1979「鋼鉄ジーグ(Jeeg robot d’acciaio)」~
「グレートマジンガー(Il Grande Mazinger)」~
1980「マジンガーZ(Mazinger Z)」。
そのため、イタリアでは「日本のロボットアニメ」と言えば最初期に放映された “UFO robot”と“Jeeg”がダントツで、ジャンルの代名詞的な存在です。
その後イタリアでは1980年に「宇宙戦艦ヤマト(La corazzata Yamato)」と「機動戦士ガンダム(Mobile Suit Gundam)」の2大巨編が放映され、イタリアでの日本SFアニメの人気が決定的なものになりました。
新日本プロレス
イタリア
サッカーのアレサンドロ・デル・ピエロはプロレスが大好きで、アントニオ猪木や藤波辰爾、タイガーマスクの大ファンだったことは有名です。
中田英寿がセリエAでプレー、ローマに移籍するまで、「イタリアで一番有名な日本人」は、アントニオ猪木でした。
80年代半ばから90年代初めまで、2~3年遅れの「ワールドプロレスリング」が、毎週土曜日の21時から「Italia1」というチャンネルで放送されており、ゴールデンタイムの放送でイタリアの多くの人がこれを見ていました。
当時、イタリアでのサッカーの試合は、まだ日曜日の午後、太陽の下で行われていて、土曜日の20時半キックオフでテレビマッチが組まれるようになったのは、ずいぶん後のこと。
だから当時のイタリア人の人たちの多くは、「猪木vs.アンドレ・ザ・ジャイアント」「猪木vs.ハルク・ホーガン」など、人気絶頂だった時代の新日本プロレスを、夜のゴールデンタイムの娯楽としてテレビ観戦していたのです。
当時、イタリア北部のサッカークラブ「ウディネーゼ」でプレーしていたジーコも、子どもと一緒に猪木のプロレスを見ていた1人。
ブラジル政府のスポーツ長官時代にリオ・デ・ジャネイロで猪木と会ったジーコは、「息子がタイガーマスクの覆面を欲しがっているので…」と、マスクをねだってきました。そのため猪木は帰国してすぐに、わざわざ虎のマスクを手に入れて、ジーコに送ってあげたそうです。
そして1988年1月、実際に新日本プロレスの試合がイタリア現地で行われました。ローマの「パラエウル(現パラロットマティカ)」という五輪会場にもなった1万人以上収容できる格式高いアリーナで、土曜日と日曜日、2夜連続で開催。
その日曜日はサッカーのセリエA、ローマvs.アスコリが終わった1時間半後のゴングだったため、ローマのスカーフを首に巻いたファンが、スタディオ・オリンピコからパラエウルのアリーナに大挙移動してきて「アントーニオ!!」と熱狂。
試合はアントニオ猪木vs.バッドニュース・アレン。猪木は得意の延髄斬りや卍固めを繰り出して、ローマっ子の大喝采を浴びました。
UWFインターナショナル
イスラエル
高田延彦率いるUWFインターナショナルは、90年代にイスラエルで「BUSHIDO “The Way of the Warrior”」というタイトルでTV放送され、超人気番組でした。
▼AP通信で報道されたイスラエル遠征の模様
遠征時にグリーンボーイで無名時代の高山善廣がディスコに言ったらフルネームで呼ばれて驚いたそうです。
ボルテスV
フィリピン
「コンバトラーV」に続く5台合体ロボアニメの「ボルテスV」の、フィリピンでの超人気ぶりは有名です。
フィリピンでは1978(昭和53)年に放送されて大ヒット、子供たちは学校から大急ぎで帰宅してTVにかじりついたとか。
視聴率も最高58%を記録しますが、人気の加熱が社会問題にまでなり、時の政権により放送中止に。「子供がボルテスVに夢中になるばかりにキャラクターグッズを欲しがり、勉強をしなくなる」と抗議の声が寄せられました。
また、第二次世界大戦後のフィリピンでの反日感情からボルテスVの武器を侍の刀の象徴であるとか、旧日本軍の賛美や戦時中の行いを正当化したもの、軍人精神を称えるものと捉えたり、本作品を皮切りに日本企業が台頭してくることを警戒する声もあり、民間で抗議団体も結成されます。
そして最終話直前の1979年8月、時の大統領フェルディナンド・マルコスが放送禁止を宣言し、国営放送での『ボルテスV』は放送中止に。
国営放送で残りの回が放映されたのは、エドゥサ革命でマルコス政権が倒れた直後の1986年。そのため「ボルテスVを放映させるために革命が起き、マルコス政権が倒れた」というジョークが語られることもあるそうです。
その後、1999年に再放送が始まると、最高視聴率が40%を超えるリバイバルブームに。朝の時間帯に放送していたため、「子供が学校になかなか行こうとしなかった」。
日本語の主題歌「ボルテスVの歌」も大ヒット、主題歌を歌った堀江美都子さんがフィリピンでライブを行った際は国賓並みの待遇を受け、フィリピンでの知名度はほぼ100%とか。
2006年、安倍晋三総理夫妻がフィリピンを訪問した際、昭恵夫人が訪問した施設で、現地の若者たちは本作品のエンディングテーマを歌って迎えました。
そして2023年、フィリピンで実写化された「ボルテスV:レガシー」(Voltes V: Legacy)が全90話放送されました。
本家へのリスペクトと愛が溢れたリメイク作品、主題歌は日本語で歌われていて泣けます。
ドラゴンボール
フランス
フランスでは1987年にアニメ「ドラゴンボール」が放送されると最高視聴率は67.5%に達する人気作品に。
確かに私が1993年に欧州遠征に行った際、ヨーロッパのあちこちで悟空のコスプレをした子どもを見かけました。大概、胸に変テコな漢字が書いてあるのが微笑ましかったです、「手」とか(笑)。
キャプテンハーロック
フランス
もう一つ、フランスで人気なのが松本零士先生の「宇宙海賊キャプテンハーロック」。こちらの視聴率は70%とも言われています。
日本では1978年に放送が開始。同年にフランスでは、毎週水曜日(その後土曜へ)に『キャプテン・アルバトール(Capitaine Albator)』として放送。
その熱狂ぶりは、フランス人の30~40代を「アルバトール世代(フランス語でハーロックの意)」と呼ぶ程で、大統領が訪日した際、松本零士先生と対面希望するほど。中世ヨーロッパの騎士道に通じる美学や、宇宙を舞台にしたスケールの大きさ、キャラクターの格好良さなどが男女を問わず支持された理由とされています。
松本零士さんは2012年、フランス芸術文化勲章の「シュヴァリエ(芸術文化勲章)」を授与された。芸術・文化に大きく貢献したと認められる人に贈られるもので、日本ではほかに作家・川端康成氏、芸術家・草間彌生氏、音楽家・坂本龍一氏などが受勲。
フランス人は日本アニメ好き過ぎですが、「グレンダイザー」に「ハーロック」って、チョイスが渋いですよね。
聖闘士星矢
ブラジル
ブラジルで「ドラゴンボール」と並ぶ超人気アニメが、車田正美さん原作の「聖闘士星矢」。ブラジルでは「カヴァレイロス・ド・ゾヂーアコ」のタイトルで知られています。
ブラジルでは今なお人気が根強く、近年現地で開催されたアニメ関連イベントでは、主題歌を歌う影山ヒロノブさんらが現地で熱狂的な声援を浴びました。
原作は1985年に週刊少年ジャンプで連載開始、翌年日本でアニメ化。ブラジル「マンシェッチ放送網」でアニメ放送が始まったのは、1994年9月1日です。
1988年、フランスで人気の「聖闘士星矢」著作権を購入したブラジルの玩具会社が、同アニメの人形のCMを流すことを条件に、破産寸前だったテレビ局にアニメ放送権を提供。
1994年からブラジル国内で放送されると高視聴率を記録。フィギュア商品は公式発表だけで「100万体売れた」そうです。
これがブラジルにおける日本アニメ人気の先駆けとなり、
1996年には「ドラゴンボール」、続いて「セーラームーン」「ポケットモンスター」「NARUTO」「ワンピース」など多くのアニメが現在、ブラジルの民間放送で放映されています。
2023年には新田真剣佑ハリウッド映画初主演作として「聖闘士星矢 The Beginning」が公開されました。
人造人間キカイダー/キカイダー01
ハワイ
最後はアニメではなく特撮作品ですが、ハワイでの「キカイダー兄弟」の人気、知名度は日本人の想像を超えています。
1974年に字幕版が放送されたことをきっかけに人気が爆発。ディスコで主題歌が流れ、挿入歌が有線チャートで1位を記録。夜な夜なバーで主題歌を合唱する光景が繰り広げられたとか。
そしてこのキカイダー人気、なんと21世紀になっても続いているのです。
2001年、毎週土曜日の19:00から再放送され、毎回70%近い驚異的な視聴率を記録。
現地では「GENERATION KIKAIDA(ジェネレーション・キカイダー)」と呼ばれる社会現象として受け入れられ、2002年4月12日にはハワイ州知事によって4月12日が「ジェネレーション・キカイダー・デイ」に、2007年5月19日にはマウイ島市長によって5月19日が「キカイダー・ブラザーズ・デイ」にそれぞれ制定されています。
主演の伴大介さん、故 池田駿介さんは近年までハワイのイベントに招かれ、老若男女のファンに取り囲まれて「名誉市民」の称号まで与えられるほどの英雄なのです。
いかがでしょうか。遠い異国の地で「なんでそれなの?」という昭和期のジャパニーズコンテツが、熱狂的に愛されているというお話でした。
このムーブメントは現在進行形で、いまも数多くの日本製コンテンツが、世界中で熱狂的なファンを生み出し続けています。
ぜひ現地に入った際は、地元のファンたちと交流してみてください!
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