音楽メディアの変遷〜カセットテープ、CD、MDからスマホまで
前回の「80年代 ラジカセ&カセットテープ特集」に続いて、今回はミュージックメディアの変遷についてお送りします!
1964年 カセットテープ誕生
カセットテープ(正式な名称はコンパクトカセット)は、1964年にオランダ フィリップス社が初めて発売しました。
さらにフィリップス社は「仕様を変えないこと」を条件に技術を無償公開、世界的な標準規格となりました。
©Phillips
1979年 SONYウォークマン登場
1979年7月1日、SONYがポータブルカセットプレイヤー「ウォークマン」を発売。「街中でヘッドホンで1人で音楽を聴く」という革命で世界中にセンセーションを巻き起こします。
SONYもまた敢えて特許を独占せず、他メーカーの類似製品開発を許す戦略で新たなマーケットを形成しました。
©SONY
1982年 CDの誕生
CD(コンパクトディスク)は、カセットテープ規格で仲良しになっていたSONYとフィリップスが共同で開発したデジタルオーディオディスク。エジソンのフォノグラフ発表から約100年となる1982に発売されました。
・名称が「コンパクト」な理由
「コンパクトカセット」の開発元であるフィリップスの意向だそうです。開発当時のサイズもカセットテープの対角線と同じ直径11.5cmだったそうですが、その後、SONYの提案で収録時間を延長し直径12cmとなりました。
・収録時間の意味
フィリップスは「11.5cm=60分」を主張していましたが、SONYは「12cm=74分」を主張。
当時ソニーの副社長で音楽家でもあった大賀典雄氏は「クラシック音楽の95%が、75分あれば1枚のCDに収められる」さらに「第九はおよそ65分程度である」と調べ上げ、名指揮者カラヤンの名前を引き合いに出し、その結果CDの時間は74分に決着しました。
・世界初のCDプレーヤー
1982年10月1日、SONY、日立、DENONの3社から発売。当時の価格は16.8万円とかなり高額でした。
・世界初のCDタイトル
同じく1982年10月1日、CBS、EPICソニーから50タイトル、日本コロムビアから10タイトルが世界で初めて発売。この中で最初に生産された「ビリー・ジョエル/ニューヨーク52番街」が世界初のCDタイトルと言われています。ただし、発売は日本より後の10月15日だったヨーロッパの方がCDの生産は少し早く、西ドイツのポリグラムで8月17日にスタート。そのためヨーロッパでは「ABBA/The Visitors」が世界初のCDタイトルと言われているのだそうです。
しかし、CD誕生は音楽業界から歓迎されたものではありませんでした。
レコード会社としては既存生産ラインを破棄して新たな製造ラインを構築しなければならない事もありますが、なによりデジタル音源でリリースしてしまうと高音質でのコピーが可能になり、海賊盤が溢れて知的財産権が侵害されてしまう、というのが業界の懸念でした。
しかし、市場は大歓迎で発売2年目の1984年にはCDの売上が、1987年にはシェアでもレコードを追い抜きました。
1998年 ミリオンセラーによるCDバブル
1980年代後半から売上を伸ばしたCDは、1998(平成10)年に頂点を迎えるミリオンセラーラッシュ、バブル期を迎えます。
1998年には25タイトルのアルバム、14タイトルのシングルがミリオンセラーとなりました。
1992年 MD誕生
1992年、カセットテープに代わる録音用メディアとしてMD(ミニディスク)が誕生します。
CD同様、曲スキップや頭出しができる、テキストによるタイトル表示、より多くの楽曲が収録できるLPモードなどの機能で大ヒット。対応ステレオ、ポータブルプレイヤー、カーステレオが続々と登場しました。
1990年代後半 MP3+インターネット時代へ
90年代後半、CD音源のWAV形式を1/12に圧縮するMP3形式が生まれ、音質の良さと容量の軽さから爆発的に普及します。
ちなみにMP3という名称はDVDに採用された映像圧縮技術MP2(MPEG2)と区別するために付けられた名称です。
同時期に一気に普及したインターネットで闇ダウンロードサイトが横行し、海賊盤の拡散が加速する事態となり大問題となりました。
2001年 iPod革命
MP3ファイルは世界中で普及したものの、SONYなどがアンチの姿勢を取ったことでMP3プレイヤーはマイナーな存在でした。
そんな中、Appleのスティーブ・ジョブズ氏が2001年1月に音楽ファイル管理ソフトiTunes、同年10月にiPodを発表。
©Apple
初代iPodの容量は5GBでmp3楽曲を約1,000曲収録可能。転送時間もFireWire接続により大幅に短縮。この音楽再生専用コンピューターiPodとファイル管理ソフトiTunes によりAppleは音楽業界に革命を起こしました。特に1,000曲のライブラリから次に何が再生されるのかわからない「シャッフル機能」は、ユーザーの音楽体験を新たな領域に進化させました。
これによりMDは完全に消えてなくなり、今ではCDさえも必要なくなりつつあります。
2003年 iTunes Storeの登場
©Apple
それまでNapsterに代表される違法、無料、海賊盤だらけだった楽曲のダウンロードに、公式販売、合法化に成功したのがiTunes Storeでした。Appleのスティーブ・ジョブズ氏は購入前の試聴、アルバム単位ではなく1曲ごとのアラカルト販売などをレコード業界に提案しますが、それでも尚、各メジャーレーベルは慎重な姿勢を示します。そこでジョブズ氏は「iTunes Storeはまず、たったシェア3%のMacでのみ展開する。たとえ失敗しても取り返しがきく」と説得し、了承を取り付けたと言われています。
iTunes Storeは2003年にアメリカでリリースされ、わずか1週間で100万曲のダウンロードを記録。それまでの累計ダウンロード数を一気に更新し、爆発的に普及しました。日本でも2005年にリリース、その後Windowsにも対応し、音楽流通のデジタル化に初めて成功しました。
その後、2007年にApple iPhoneが登場。いまや音楽はスマホで聴くことが当たり前になり、今に至ります。
さいごにまとめ
各時代でイノベーションが起きる度に、レーベルを保有するメーカー各社は慎重な姿勢を示し、それでもブレイクスルーして現在があるワケですね。進化は止められないのです。
かつて、LPやシングルレコードのA面、B面の何曲目、カップリングという概念は完全に過去のものとなり、楽曲は1曲あたりの単位で聴く時代になりました。
私自身もオリジナルアルバムを制作した経験がありますが、アーティストサイドとしては「この楽曲の次はこれ」という流れや全体の世界観が構築できないワケで、この流れはなかなか複雑なものがあります。
しかし、もはやそういう時代として変化を受け入れるしかないのでしょうね。
iTunes Storeに代表されるダウンロード型のメリットとしては、思いもよらない、聴くはずのないアーティストの楽曲に偶然触れる機会を得られる事です。
若い世代にとってはThe Beatlesや美空ひばりも、EXILEやTWICEも同列なのです。
なんとも複雑ですが、悪いことだけでもない気もしますね。
もう一つ、かつてCDバブル期は「CDの売上で稼ぎ、Liveでプロモーションする」というビジネスモデルでしたが、現在はCDが売れなくなり、Liveのチケット代と物販が稼ぎどころ、という変化が起こりました。
YouTubeやニコニコ動画といった無料の映像サイトも普及し、もはやプロモーションビデオも無料プロモーションにしか使えなくなっています。
ますますミュージシャンは楽曲というソフトウェアで儲ける、ということがかなり難しくなって来ています。
これが音楽業界を衰退させている原因、とも言われますが、逆に言えば巨額のプロモーションを必要としなくても、誰でもYouTubeでスーパースターになれるチャンスがある、とも言えます。
あと10年、20年したらどうなっているのでしょうね。
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