今回は、昭和のお茶の間を賑わせた伝説のTVプログラム。
水曜スペシャル「川口浩探検シリーズ」をご紹介します。
■「川口浩探検シリーズ」とは?
俳優 川口浩さんが隊長を務めた、テレビ朝日「水曜スペシャル」の名物企画シリーズ。
1978(昭和53)年から1985(昭和60)年までの7年間に、全45タイトル!が放送されました。
世界各地の秘境に猛獣、UMA(正体不明生物)、少数民族などを求め「探検」して、視聴率も20%を叩き出す人気シリーズ。
ヤラセ、大袈裟、胡散臭いなどの声が巻き起こり、徐々にネタ化して行き、BGMやテロップ、ナレーションなどの過剰な演出は、その後のバラエティやお笑い番組で散々パクられました。
その知名度は、嘉門達夫さんによる「ゆけ!ゆけ!川口浩!!」が大ヒットしたことでもわかりますね。
■1970年代のオカルトブーム
1973(昭和48)年、後藤勉氏の著書「ノストラダムスの大予言」の大ヒットして以降、日本は空前の“オカルトブーム“が起こりました。
ネッシー、ツチノコ、ユリ ゲラー、心霊写真、超古代文明、コックリさん、口裂け女、オリバーくん…ここでは日本テレビの「あなたの知らない世界」や「矢追純一木曜スペシャルUFO特集」が一歩リードしていました。
それに追いつき追い越せ、と企画されたのがテレビ朝日「水曜スペシャル」川口浩探検隊シリーズだったのです。
●川口浩さんは、もともと隊長ではなかった?
この企画の発端は、1977年3月から計3回放送された水曜スペシャルの探検企画で、その際の隊長は西村晃さん、宍戸錠さんで、川口浩さんはスタジオの司会役でした。なんでも川口浩さんは、自ら隊長になることを希望しただそうです。
■過剰な演出
テーマソングは「特別狙撃隊S.W.A.T.」のサントラ。
日本人はもはや映画のサントラとは誰も認識してないほど、「川口浩探検隊のテーマ」になってしまってます。
「猿の惑星」や「カプリコン・1」「U・ボート」「カサンドラ・クロス」そして「ロッキー」など、シーンに合わせた洋画サントラ曲の選曲センスも抜群でした。
画面いっぱいのテレ朝お得意の手書きテロップ、そこに被さる田中信夫さんの大袈裟なナレーション。
CMまたぎで「この後我々は、遂に●●の正体を目撃する!」とか言っておきながら、CM明けると何事もなく話が進んだりするのも、お約束でした。
●秀逸なタイトル集!
水曜スペシャル 川口浩探検隊シリーズといえば、そのタイトルの煽り方もまた、抜群でした。
新聞のラテ欄でひと目見たらチャンネルを回さざるを得なくなる、パワーワードのチョイスは秀逸。
放送リストを並べてみると…
1.1977年7月20日「死の八甲田山の謎!映画も明かせなかったその真相」
2.1977年11月16日「ルソン島奥地の秘境に首狩り族は実在した!!無数の頭蓋骨が語る今なお残る恐怖の奇習!現地完全VTR取材」
3.1978年1月18日「地上最大の毒蛇デビルファングを追え!」
ここまでは隊長 西村晃さん、宍戸錠さん時代です。
川口浩探検隊シリーズ
1.1978年3月15日「20世紀の奇跡を見た!!人跡未踏の密林に石器民族は1000年前の姿そのままに実在した!!」
2.1978年6月28日「驚異の人食いワニ・ブラックポロサスを追え!恐怖の毒蛇タイパン狩り!2億年の恐竜は存在した!」
3.1978年11月29日「暗黒の魔境アマゾン奥地3000キロに幻の原始民族を追え!! -第1部- 」
4.1978年12月6日「暗黒の魔境アマゾン奥地3000キロに幻の原始裸族を見た!! -第2部-」
5.1979年2月14日「緊急特報!パラオ島奥地に生き残り日本兵を追え!!」
6.1979年5月9日「あのジョーズの海フロリダ沖に人食いサメは存在した!!」
7.1979年8月15日「完全踏破!ガタルカナル奥地に白骨街道は実在した!!2万5千の遺骨が語るガ島奪回丸山道作戦の謎」
8.1979年10月10日「これが地球の底だ!!人類未踏!オーストラリア世界最大の地底大洞穴探検!! 」
9.1980年1月23日「これが海底大洞窟だ!!世界最大!パラオ諸島の二つの島を結ぶ鍾乳洞トンネルは実在した!!」
10.1980年2月13日「姥捨て!八丈島日本最長の溶岩大洞窟に人捨て穴は実在した!!」
11.1980年4月23日「恐怖の人食いザメ!!南オーストラリア嵐の海に人間が食われる瞬間を見た!」
12.1980年5月28日「爬虫類王国オーストラリア!猛毒蛇の大洞窟征服の果てに幻の白いカンガルーを見た!! 」
13.1980年7月9日「恐怖の人食いトラ!!インドネシア・スマトラに“密林の殺し屋”を追え!! スマトラトラの捕獲に成功」
14.1980年7月30日「巨大怪蛇ナーク!!タイ秘境底なし沼に恐怖の魔人は実在した!!」
15.1980年10月22日「恐怖の首狩り族!ルソン島未踏の奥地にウロン族は実在した!!」
16.1980年11月19日「“ギャオ”これが地球の割れ目だ!氷の国アイスランド地底大洞穴に恐怖のマグマ地獄を見た!!」
17.1980年11月26日「“ギャオ”これが地球の底だ!火と鳥の島アイスランド地底大洞穴に“悪魔の腹わた”を見た!!」
18.1981年2月25日「恐怖の世界猛獣探検隊シリーズ総特集!!」
19.1981年4月29日「首狩り族か!人食い人種か!?最後の魔境ボルネオ奥地に恐怖のムル族は実在した!!」
20.1981年7月8日「恐怖の吸血コウモリ数万大群をメキシコ魔境洞穴に捕獲せよ!!」
21.1981年10月7日「巨大怪奇地底都市!!美少女ミイラ発見!トルコ秘境に幻の黄金宮殿の謎を追え!!」
22.1981年11月4日「湖が消えた!謎の巨大異常現象をユーゴスラビアに見た!!」
23.1981年11月11日「密林の王者ターザンは実在した!!」
24.1982年5月12日「恐怖!双頭の巨大怪蛇ゴーグ!南部タイ秘境に蛇島カウングの魔人は実在した!!」
25.1982年6月9日「謎の原始猿人バーゴンは実在した!パラワン島奥地絶壁洞穴に黒い野人を追え! 」
26.1982年7月28日「恐怖の死闘!猛毒ハブ異常大軍団の謎を台湾秘境洞穴に見た!!」
27.1982年12月1日「謎の巨大要塞島!コレヒドール地底に白骨トンネルは存在した!」
28.1982年12月8日「恐怖の人食いトラ!スマトラ奥地密林に血に飢えた牙を追え!!」
29.1983年1月19日「謎の地底大噴火!中国竜口洞に怪現象“仙人水”は実在した!!」
30.1983年2月9日「恐怖の人食いザメをオーストラリア死の海に追え!」
31.1983年6月22日「恐怖!ブラジル魔境に人食いピラニア大軍団を追え!逆襲死闘」
32.1983年7月27日「驚異!幻の魔獣“バラナーゴ”をスリランカ奥地密林に追え!!」
33.1983年10月19日「決死の大氷壁!アルプス大洞穴に謎の巨大氷宮殿は実在した!!」
34.1984年1月25日「衝撃!魔境ボルネオ島奥地に幻の巨大獣人を追え!! 」
35.1984年4月11日「恐怖の蛇島は実在した!!南フィリピン魔の海に異常発生大群団を追え!!」
36.1984年5月30日「驚異!幻の石器民族はボルネオ島奥地密林に実在した!!」
37.1984年7月4日「恐怖の人食いワニ!オーストラリア魔の河に死神ブラックポロサスを追え!!」
38.1984年10月17日「衝撃!謎の巨大白骨洞穴発見!!パラワン島密林に“開かずの扉”は実在した!!」
39.1985年1月16日「恐怖の巨大怪鳥ギャロン!ギアナ奥地落差1000メートルの大滝ツボ洞穴に原始怪獣を追え!!」
40.1985年4月24日「暗黒の怪“光る河”はブラジル死の妖気大洞穴に実在した!!」
41.1985年6月19日「フィリピン原始洞穴に幻の石器裸族タオパントゥは実在した!!共同生活5日間 」
42.1985年7月24日「ワニか怪魚か!?原始恐竜魚“ガーギラス”をメキシコ南部ユカタン半島奥地に追え!!」
43.1985年7月31日「ワニか怪魚か!?原始恐竜魚“ガーギラス”をメキシコ南部血塗られた伝説の湖に追え!! -完結編-」
44.1985年11月13日「ガラパゴス炎上!珍獣を絶滅から救え!!地上最後のゾウガメ大捜索! 」
45.1985年11月20日「珍獣王国ガラパゴス炎上!火災現場大捜査!」
どうですか(笑)「実在した‼︎」「追え‼︎」が大好きですね(笑)
個人的にはやはり「恐怖!双頭の巨大怪蛇ゴーグ」と「謎の原始猿人バーゴン」がお気に入りです。
この2タイトルは1982年の5月と6月と連続だったんですね。
●番組にトドメを刺した「アフタヌーンショーやらせ事件」とは?
1985(昭和60)年夏。
同じテレビ朝日で放送されていた人気ワイドショー「アフタヌーンショー」で“やらせ事件“が発覚。
世間のバッシングが巻き起こり、そのとばっちりでこの「川口浩探検隊シリーズ」への風当たりも強まりました。
アフタヌーンショーのやらせ事件とは、「激写!中学女番長!!セックスリンチ全告白」というものすごいタイトルで放送された番組内容が、実はテレ朝社員のディレクターの指示で行われていたという「事件」です。
ディレクターは無職の男に対して「リンチショーを撮影したい」と持ちかけ、無職の男はディレクターに石工を紹介し、現場で指示を出した上にギャラまで支払っていたという悪質さで「暴力行為教唆容疑」で逮捕されました。
この事件発覚後、テレビ朝日は視聴率も急落し、「やらせ」への世間の目は厳しくなります。
同時期に川口浩さんが癌のため療養生活に入ったことも重なり、1985(昭和60)年11月を持ってこのシリーズは終了となりました。
シリーズ終了後、特別編として川口浩さんの闘病を追った特番も放送されました。
46.1986年5月7日「流氷が落日に燃えた・川口浩がんを乗り越え新たな出発」
川口浩さんはこの1年後の1987(昭和62)年11月17日、51歳でお亡くなりになりました。
2002年から後継の「スイスペ!」枠にて「藤岡弘、探検隊シリーズ」が制作されました。
そして2005年(平成17年)1月26日、ユニバーサルミュージックから『川口浩探検隊』シリーズ中6本が初DVD化され、発売されています。
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